人は周囲からチヤホヤされるとなぜ「勘違い」がはじまるの

尾藤 克之

画像は書籍書影(筆者撮影)

「運」とは、目には見えない不思議なもの。でも、いつだって「運がいい人」もいるし、いつも何だか「ツイてない人」もいる。どうしてだろう?実は、ほんのちょっとの「ある習慣」で、あっさり運が舞いこむ人に、誰でもなることができるんだ。

今回紹介するのは、『なんか知らないけど、強運が舞いこむすごい習慣』(SBクリエイティブ)。著者は、マーケッターの本田晃一さん。代表作としてベストセラーを記録した、『はしゃぎながら夢をかなえる世界一簡単な法』(SBクリエイティブ)がある。

「運がいい」には仕組みがある

「仕事運」がいい人。これは、自分のメリットよりも相手のメリットを考える人に訪れる運だと考えられる。ビジネスであれば、相手にメリットが無ければ成立しないからである。自分のメリットばかりを考えていては、取引できる会社は無くなってしまう。

「『なんか知らないけど、ツイてないなぁ……』『運が悪いなぁ……』。きっと、皆さんも日常の中でこんなことをつぶやいたことがあるはずです。お金持ちの人、モテる人、うまくいっている人。こうした人々を見ると、僕たちは『生まれながらに運がいい人』だと思って、ツイてない自分と比較しては、ため息をついてしまいます。」(本田さん)

「でも実は『運』って、生まれながら決まっているものじゃない、なんて言ったら驚くでしょうか。『父親がお酒を飲んで酔っ払い家族に乱暴した』『母親に子どもの頃、かわいがってもらった記憶がない』『家が貧乏で、好きなものを買ってもらえなかった』。実はこういう状況でも、『運』って、僕たちを見放すことがありません。」(同)

本田さんは、これは、「運のいい時・悪い時」の「ちょっとした違い」に気づくことだと解説する。これに気づくことで、どんな人でも強運な人になることができると。

「目に見えない不思議なものなのに、僕たちは『運を使う』とか『運を貯める』なんて言います。運は、目に見えて増えたり減ったりしないものなので、正しく運を『使う』も『貯める』もないように思えるかもしれません。でも実は、「運の正しい使い方・貯め方」にはとても簡単なルールがあるんです。」(本田さん)

運気が下がる「自分を大切にされる習慣」

人間というのは周囲からチヤホヤされると勘違いがはじまる。山田さんは、3年前に大手メーカーを退職し独立した。しばらく苦しい時期もあったが、最近、メディアに取上げられたメソッドが注目されている。噂を聞きつけた会社が全国から押し寄せ、講演は2年先まで埋まっていた。今日は東北のQ市にあるA建設会社で講演の予定である。

--ここから--
山田さん「社長はまだか?人をさんざん待たせておいて。お茶も出ないの?ん」

社長秘書「本日急用があり申し訳ございません。もう少々お待ちください」

山田さん「オレを誰だと思っている!これだから田舎の三流会社は嫌なんだ!」

社長秘書「山田さま。申し訳ございません。もう少々お待ちいただけ・・・」

山田さん「黙れ、うるさい!!!オレは忙しいんだ。なめるな!」
--ここまで--

なんと、山田さんはあろうことか帰ってしまった。山田さんを推薦した、県商工会の面目は丸潰れだ。その後、全国の商工会に噂が広がってしまった。そして1年後、山田さんに声をかける会社は無くなっていた。山田さんは、失意のうちに会社を廃業する。

「自分は大切にされて当然と、『悪い勘違い』が始まると運気が下がります。イライラする回数も増えます。訪問先でお茶が出るのが遅いだけで『俺を誰だと思ってるんだ!』とイラつく自分がいるんです。車で割り込まれても『俺を誰だと思ってるんだ?』。頼んだ料理が来るのが遅いと『これだから安い店は……まったく』となります。」(本田さん)

「イライラの源泉は、『自分が大切にされてない』という不満なんですね。怒る理由の大半は、多分これです。周りの人に認められると、『大切』にしてくれる人が増えます。この『大切にしてくれる』というのは、いい待遇を受けるとか、おいしいものが食べられるとか、そんな目に見える『幸せ』です。本当にハッピーであるかは別ですけどね。」(同)

大切にされるという勘違いとは

「いいレストランやグリーン車を利用したりして、受けるサービスもどんどんよくなっていくと、『大切にされていると感じる平均値』が上がります。同時に、『大切にされていないと感じるゾーン』も増えていきます。贅沢を覚えるともとに戻れない理由は、この『大切にされていると感じる平均値』が上がることにあると思います。」(本田さん)

「今は幸運だと思うけど幸運は続くわけがない。自分はごく一般的なほうだけど、この先もそんなに幸運に恵まれるとは思えない。『運のいい時・悪い時』の『ちょっとした違い』に気づくこと。心の持ち方、考え方をほんの少し変えるだけで、誰でもちゃっかり『運』が舞いこむ人になれます。」(同)

本書は、「運」をテーマにした自己啓発になるが、日常に役立つ多くのケースが紹介されている。仕事の調子がいいときには自分を見失うことがある。自分自身に謙虚になり、努力できる人にとっては正しい道筋を見つけるヒントになるかも知れない。

尾藤克之
コラムニスト