なぜ男性は「気になる女性」の前で自慢話をはじめるの?

画像は書籍書影(筆者撮影)


ビジネス心理学をご存知だろうか。よく知られているものに、アサーティブ、フレーミング、バーナム効果、コールドリーディングなどがある。心理学は「人問心理を解き明かすもの」だが、知っているだけでは役にたたない。大事な場面で、「使える」という実践的なレベルにまで高めておかないと、中途半端な知識で終わってしまう。

今回は『モテすぎて中毒になる男女の心理学』(すばる舎)を紹介したい。著者は、神岡真司さん、累計140万部を超すビジネス心理学の専門家として知られている。主要著書としては、30万部ベストセラー『ヤバい心理学』(日文新書)がある。

自慢話は女性への「好意」の表れ

神岡さんによれば、「男性脳」は、獲物をどれだけ獲得したかで、序列が決まる原始時代のメカニズムを引きずっているようだ。男性がライバル心を燃やしている。

「『男性脳』は『競争』をベースに動いています。獲物をどれだけ獲得したかで評価が下されるからです。そして男性同士はライバルに過ぎないという考えに支配されています。こんな『男性脳』は、つねに自分を鼓舞することが習慣化していす。競争社会で生き残るためには、モチベーションが欠かせないからです。女性の前でも、つい自慢話をはじめてし まうのも、そんなカラクリのせいなのです。」(神岡さん)

「『残業自自慢』『睡眠不足自慢』『ハードな仕事自慢』『やんちゃ自慢』『若い頃の不良自慢』は、もはや定番でしょう。仕事に追われていかに忙しいか、という自分の重要性をアピールするわけです。女性からすると、『何じゃ、コイツは?』と思います。自虐的だからです。体を壊したら、元も子もないだろう違和感が湧くからです。」(同)

大手町に本社がある東京ゴクラク商事(仮名)に勤務する「スバルさん」は、新卒で入社して現在3年目になる。今日は、同じ部署に新卒ではいってきた「アケミさん」と社食で一緒になった。柔らかいオーラを持つアケミさんは、癒し系として社内で人気が高く、マドンナ的存在だ。スバルさんはさりげなく話しかけた。

--<一般的な会話>--
スバル「ここんとこ、仕事がハードでね、昨日も午前様でさ。参っちゃうよ」

アケミ「お仕事、お忙しいんですねえ。睡眠は十分とれるんですか?」

スバル「いやあ、帰ってからも、やることがあるしね。昨日は2時間睡眠だったよ!」

アケミ「すごーい、大丈夫なんですか?毎日じゃ、大変じゃないですか??」

スバル「今が勝負どころなんで。ここだけの話、社長からも期待されてるしね!!」

アケミ「きゃー、期待されてるなんて超ステキです!」
----ここまで----

「なぜ、男性は、こんな自慢をよくするのでしょうか。自虐的な話なのに、なぜ得意気に話すのか不思議です。男性にとっては、仕事の自虐的な話も、趣味の話も、自分アピールに欠かせない要素と思っているのです。自分を認めてほしいという『承認欲求』の表れに他なりません。」(神岡さん)

「男性に頼みごとをするなら、『さすが~』『すごーい』『すてきー』などで感嘆してください。『いい気分』にさせてからが狙い目でしょう。男性は、自分が好意を持っている女性にこそ、自分を認めてほしいと思っていますから、自分の売り込みに熱中するほど、その女性への好意も大きいといえるからです。」(同)

うぬぼれ男の承認欲求を封印せよ

しかし、いくら寛容的な女性でも自慢話ばかりされると、カチンとくるもの。こういう男性に限って、女性の話はスルーして自分のことしか話さない。

「『残業自自慢』『睡眠不足自慢』『ハードな仕事自慢』『やんちゃ自慢』『若い頃の不良自慢』などは、女性にとってはどうでもいい話です。女性も思わず『だから何?』『何がいいたいの?』と正面から切り返してやりたくもなります。同じ自慢話をうんざりするほど聞かせる相手だったら、一度お灸をすえましょう。」(神岡さん)

--<お灸をすえられた会話>--
スバル「ここんとこ、仕事がハードでね、昨日も午前様でさ。参っちゃうよ」

アケミ「えーっ、それって、あなたが仕事ができないってこと?」

スバル「いやあ、帰ってからも、やることがあるしね。昨日は2時間睡眠だったよ!」

アケミ「段取りが悪いんじゃないの?いいビジネス書を貸してあげようか??」

スバル「今が勝負どころなんで。ここだけの話、社長からも期待されてるしね!!」

アケミ「社長もたまらないわね~これじゃ(汗)」
----ここまで----

このように男性の自慢話はすぐに底が割れる。先ほどと同じ会話になるが、女性からロジック明快に責められると自慢話はしなくなる。「男性脳」は論理思考ゆえに傷つきやすい。しつこい自慢話は、一度論破してあげることも必要かも知れない。

本書は、男女の関係に特化した心理テクニックが紹介されている。 恋愛、夫婦問題、仕事のベースも人間関係によるもの。面倒な異性を黙らせ、社内で評価されるには心理学を理解しておきたい。心当たりのある方には早めの処方をおすすめする。

尾藤克之
コラムニスト