厚生委再審査を求めて。「Working Together 」で虐待根絶!

児相職員の多忙とオペレーションミスを混同しない

目黒区5歳女児虐待死事件が、東京都だけではなく全国的な注目を集め、風化しないさせないという国民の皆様の強い思いを実感しております。

長きにわたる自民党政権において虐待問題になかなか動かず慎重であったことは、保育園待機児童問題同様後回しにされてきたこと同様、逆説的には「やっぱやってくれない!」期待を裏切りませんが(苦笑)、庶民の味方“風”の労働組合政党の方々がなぜ虐待問題に斬り込まなかったのか…。それは児童相談所の問題を指摘するということは公務員を批判するということになるからです。

国会を巻き飲んでの改正へ動き始めたのは喜ばしいことですが、必ず噴出するのが「児相職員が案件を抱ええて多忙」→「人員の拡充・体制強化」という議論です。労働組合政党の国会議員が口角泡を飛ばして国会で発言なさることでしょう。

しかし、今回は人員が足りなくて発生したのではなくて、公務員の職務として当然果たすべきことをしなかった、五歳女児の現認をするという当たり前のことを怠ったというオペレーションミスに他なりません。DV・ストーカー被害者の住所や個人情報をウッカリ加害者へ漏らし被害者が殺されたり甚大な被害に遭った事件が何度もありましたが、これは、人員が足りなかったから起こったことなのでしょうか?教員の体罰や暴言で子どもが自殺に追いやられる事件も、日本の教員が残業が多く多忙だからなのでしょうか?

人はミスを犯すものです。だから多くの目でチェックをする。それが私の求める「児童相談所と警視庁の虐待情報全件共有」なのです。児童相談所職員が足りないというなら、同じ東京都職員の警察官と情報をすべて連携をしてお互いセルフチェックしながら動けばいいのではないでしょうか。

知事鳴り物入りのPTへの危惧

世論の抗いがたい風を受け、知事陣頭指揮のもと副知事を本部長とする児童虐待防止に向けた都のプロジェクトチーム(PT )が6月21日に初会合を開いたとのことです。

「児相と警察の情報共有の範囲について、これまでは暴行による身体的虐待に限定していたが、今後は、保護者が児相の訪問を拒否した場合などで連携することを確認。子供の前で家族に暴力をふるうなどの心理的虐待や性的虐待、ネグレクト(育児放棄)などのリスクが高い事案も情報共有していく」(18.6.21産経ニュース)とのことですが、全件共有しなければそこに常に「危険性を判断」する職員の裁量権が生まれ、結果虐待事案を児童相談所が抱え込み、児相が「必要とした場合」のみ情報提供し、「危険性が低いと判断」して、過去10年の間に児相・区市町村が関わりながら26名の子どもを取りこぼして、命を救えなかったことが再発すると上田は危惧するものです。

決して、ケチをつけるつもりもなく知事や東京都が前向きに動き出したことは評価するのですが、スタートライン、土台とするところがグラグラしていて大丈夫なのか?と申し上げているのです。引き続き警鐘を促してまいります。

厚生委員会での審査再開を求める陳情が提出される

去る6月8日に虐待問題に造詣の深い元警察官僚後藤啓二弁護士による、児童相談所と警視庁の虐待事案全件共有を求める「児童虐待及び虐待死の根絶に関する陳情」警察消防委員会では残念なことに、共産党を除き反対多数否決。厚生委員会では、「継続審査」となりました。

目黒区虐待死関連陳情、都ファまで否決。結論出ずご参照)

「継続審査」とは名ばかりで2021年任期満了まで塩漬けとなり、廃案となることが想定され、その間同様の陳情は受け付けないこととなることを懸念し、子ども達のために、後藤弁護士は二の矢を放ちました。それが以下、厚生委員会での審査の再開を求める陳情です。長年悲惨な事例に寄り添ってきた後藤弁護士の思いが伝わると思いご本人の快諾を得て転載いたします。この陳情がその後どのような扱いになるかは追ってお知らせしてまいります。

厚生委員会に付託中の陳情30第20号につき第3回定例会中の議決を求める陳情書

特定非営利活動法人シンクキッズ‐子ども虐待・性犯罪をなくす会
代表理事  後藤啓二

陳情事項(願意)
・現在、厚生委員会に付託中の陳情30第20号の1「児童虐待及び虐待死の根絶に関する陳情書」について、直ちに継続審査を解いて審査を進めて、第3回定例会会期末までに議決をして都民と都知事以下関係機関に都議会として意思を示してください。

陳情理由
私たちは、本年3月目黒区で発生した5歳児虐待死事件(「本事件」といいいます)を受け、都知事に再発防止対策を求める要望書を提出し、都議会にも陳情30第20号「児童虐待及び虐待死の根絶に関する陳情書」(「同陳情書」といいます)を提出した者です。同陳情書は厚生委員会において継続審査になっています。

本事件は児童相談所が知りながら警察と情報共有せず児童を虐待死に至らしめた事件です。児童相談所が面会を拒否された際に警察に電話すれば、警察官が家庭訪問し児童の衰弱した様子を確認でき、直ちに保護することができました。児童を救えなかったのは、児童相談所の人手や予算が足りないからでも、香川県との引継ぎが悪かったからでもなく、親に面会拒否された場合ですら警察に連絡しない児童相談所の閉鎖的な体質が原因です。

私たちは、平成27年6月、葛飾区1歳児虐待死事件、足立区3歳児ウサギ用ケージ監禁虐待死事件を受け、都知事あて児童相談所と警察との全件情報共有と連携しての活動を求める要望書を提出し、平成29年2月、都家庭支援課長を訪問し「全件共有しないと同様の事件が起こる。全件共有してほしい」旨要望しましたが、拒否されました。そうした中、本事件が起こりました。都が要望を受け入れていれば、目黒区の被害児童は救うことができました。

懸念どおりとなったにもかかわらず、なお小池都知事は理解を示されません。このままでは都内で同様の事件が起こってしまいます。

全国的には、高知県、茨城県、愛知県で全件情報共有と連携しての活動が実施され、今月には埼玉県と岐阜県の知事が本年度中に実施する旨発表されました。近々複数の府県でも発表される予定です。また既に多くの市町村の要保護児童対策地域協議会の実務者会議に警察が参加し、全件情報共有が実施されています。
他府県や多くの市町村で実施されながら、本事件を引き起こした東京都が拒むなどありえません。

児童相談所が知りながら命を救えなかつた子どもは10年で全国で150人に、都内では26人にも上ります(区市町村含む)。これらの多くは児童相談所と警察が情報共有し連携して活動すれば救えました。児童虐待は一つの機関で対応できるほど甘い問題ではありません。

イギリス政府の児童虐待対応のガイドラインの題名は「Working Together to Safeguard Children」であり、「ワーキング・トゥギャザー(関係機関で一緒にがんばろう)」が基本的な理念です。児童相談所、警察、学校、病院等子どもを守る機関が、他機関の役割を理解し敬意を表し、信頼関係を構築しベストの方法で取り組んでいくこととされています。イギリスやアメリカでは日本の児童相談所の20~30倍の体制を有しています。それでも「ワーキング・トゥギャザー」、警察との全件情報共有と連携しての活動を実施しています。児童相談所の人員を増やせば連携が必要ないなどありえません。東京都はこれと正反対で、関係機関の役割を理解し、連携しようともせず案件を抱え込み、いつまでも改めません。

都議会は「ワーキング・トゥギャザー」の理念をご理解いただき、都知事に私どもの要望に応じるようお働きかけいただき、都内の子どもたちをお守りいただくようお願いいたします。このままでは都内の子どもたちは関係機関が連携して守られる他府県の子どもたちと異なり、児童相談所が案件を抱え込んでは救われない危険な環境に放置されたままです。都議会がこのようなことを放置されることはないと信じております。

以上ご勘案の上、同陳情書が厚生委員会で継続審査とされたことにつき、継続審査を解除し審査を再開し、早期に議決していただきますよう陳情いたします。

以上

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都民の皆様も日本全国の皆様もメールで声を届けることができます。上田令子blog「児相と警視庁の虐待情報全件共有を知事・都議会に実現させよう!」をご参考にちょこっと勇気を届けてください!

お姐総括!

「Working Together to Safeguard Children」すなわち「ワーキング・トゥギャザー(子ども達を守るために関係機関で一緒にがんばろう)」という基本的な理念はなんと魂に響く言葉でしょうか。縦割り行政でたらい回し、責任回避、そうこうしているうちに、どれほどの子ども達が、この日本で、東京で、そして今この時もこぼれおちているでしょうか?

国際派の小池知事は語学堪能で、良く英語もおつかいになります。東京都の虐待政策のキャッチフレーズに是非つかっていただいたいです。

Working Together to Safeguard Children!!

また、知事はよく「近所に雷おやじや世話焼きおばさんがいて子どもを見守っていた」という言葉をお使いになります。こういう人達は近所の子ども達のことも、その親のこともすべて知ってて、しょっちゅう情報交換していたたことでしょう。それを都庁で実現すればいいのです!!

雷おやじ→警視庁+世話焼きおばさん→児童相談所=児相警察虐待情報全件共有!!

おあとがよろしいようで…


編集部より:この記事は東京都議会議員、上田令子氏(江戸川区選出、かがやけ Tokyo)のブログ2018年6月25日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は上田氏の公式ブログ「お姐が行く!」をご覧ください。