「ガイア」を守るエネルギーは何か(アーカイブ記事)

池田 信夫

ジム・ラブロックが、103歳で死去しました。2018年6月27日の記事の再掲です。

Wikipediaより

地球温暖化の問題には、科学的に不確実な要因が多い。「ガイア仮説」を提唱し、かつては地球温暖化の脅威を警告していたジム・ラブロックは、最近この点について考えを変えたという。

「地球温暖化の最大の原因は人間の排出するCO2である」という因果関係が成り立つには、少なくとも次の事実を証明する必要がある。

  1. 地球の平均気温が上がっている
  2. 大気中のCO2濃度が上がっている
  3. CO2増加の最大の原因は人間活動である

このうち1は、ほぼ間違いない。図1のように19世紀末から一貫して気温は上がっており、2016年には史上最高を記録した。地球の長い歴史の中では循環的な変動である可能性もあるが、少なくとも一部の人がいうように「寒冷化」する兆候はない。

図1
では2はどうだろうか。ハワイのマウナロアで観測されたCO2濃度(NASA)のグラフは、図2のように(季節変動をならすと)50年以上きれいな直線を描いている。

図2
CO₂濃度が単調に増加しているのは、排出量が吸収量より多く大気中に蓄積するためだが、ここで疑問なのは、この直線があまりにもきれいで、人間活動の影響を受けているようにみえないことだ。

最近50年で人間由来のCO2濃度は4倍になり、特にここ20年は途上国で急増したが、地球全体のCO2濃度の増加率には、まったく影響していない。これをさらに長期のデータでみると、図3のようになる。

図3

これは図2と同じカリフォルニア大学スクリプス研究所のデータだが、1960年ごろ化石燃料によるCO2濃度が地球全体を超えている。これはスクリプス研究所にの説明によると「人間の排出したCO2の57%が大気に蓄積する」ということらしいが、では1960年以前には100%以上蓄積したのだろうか。

その原因は、ガイア(地球の生態系)が、CO₂濃度を調整しているためと考えられる。ラブロックは「CO2は重要だが、ガイアの調整能力は大きいので、それほど心配はない」という。海と森林が人間の排出した炭素を吸収して生態系の平衡を保つので、CO2の排出量ほど急激に濃度が上がらないのだ。

大事なのは「人間が地球を守る」という傲慢な考えを捨て、ガイアの調整機能を守ることだ。この点で生態系を攪乱する再生可能エネルギーは好ましくない。森林を破壊する太陽光も風力も、ガイアを破壊して調整能力を減殺する。

彼が「もっとも環境にやさしいエネルギー」として推奨するのは原子力である。「埋蔵量は海水ウランを含めれば無尽蔵だ。核廃棄物は、1人1年分でウイスキーの瓶1本分ぐらい。密封すれば、私の家の庭に埋めてもいい」という。