フォローアップが続く電波制度改革

山田 肇

6月27日に規制改革推進会議投資等WGに呼ばれて、電波制度改革について意見を述べた。電波制度改革は2017年11月の第二次答申で方針決定したが、それがきちんと履行されているか点検するのが会議の趣旨である。

僕は電波の利用状況調査について考えを表明した。電波免許を得てもきちんと利用していない免許人がいる。発射されている電波をモニターして利用効率が低い免許人を洗い出し、電波の返上を求めるアクションにつなげていくのが利用状況調査である。

総務省は、電波有効利用成長戦略懇談会・公共用周波数等WGで利用状況調査の拡充を打ち出した。この動きは歓迎できるものだが、経費が抑えられているために調査範囲は限定されている。総務省の方針は重点調査対象システムを10年で一巡するとなっており、そのうえ対象局の10%を調査するにとどまる。

移動通信システムは10年に一度世代交代しているのだから、「重点対象システムを10年で1巡」という総務省方針では利用状況の把握には不十分である。また、10%を調査することの合理性がわからないので総務省に説明を求めるべきと、僕は意見を述べた。

総務省方針(2019年度からの3年間で経費60億円)を拡充すればさらに経費が掛かる。しかし、利用状況調査の先で新しい用途に電波が配分され、それが年間使用料2万円(月2000円以下)で1000万加入の新たな電波利用サービスを生み出せば、年商は2000億円になる。新事業からの納税額・電波利用料を勘案すれば、「3年間で60億円」の電波利用調査はシードマネーとして十分に合理化され、増額しても構わないではないか。

一方、昨年秋の行政事業レビュー秋の年次公開検証では、電波利用料の用途のうち研究開発等には必要性が必ずしも見いだせないものがあるとの指摘が出た。第五世代の移動通信システムなど、総務省が一部負担しなくても、移動通信事業者が実施するのは明らかだからだ。電波利用料からの研究開発支出は年額200億円程度だから、利用状況調査を拡充しても、研究開発費の1割か2割縮減で十分に賄える。

投資等WGでは吉川尚宏氏も意見を陳述した。移動通信システムの基地局設備(アンテナタワー)のシェアリングには、新規参入が容易になる効果があるという説明だった。これは第二次答申が打ち出した、経済的価値を踏まえた金額の申請と人口カバー率・技術的能力等を総合的に評価して新規免許を割り当てる新制度(日本型オークション)の中に組み入れるべきものだ。

山田 肇
ドラえもん社会ワールド 情報に強くなろう』監修