よくやったぞ、W杯日本代表!

▲日本選手のマフラータオルと手作りの日本の旗(2018年7月2日、ウィーンで)

日本時間3日午前3時(ウィーン時間2日20時)からサッカー・ワールドカップ(W杯)ロシア大会決勝トーナメント、ベルギー対日本代表の試合をテレビ観戦した。以前日本で買った選手名入りのマフラータオル、スカーフを家族皆それぞれ首に巻く。妻が手作りした日本の旗をテレビの横に飾る。これで準備は整った。息子はハンバーガーを注文した。ゆっくりと夕食を食べている時ではないからだ。当方と妻は早めに夕食を済ませ、テレビのスイッチを入れて待機した。

息子はテレビのチャンネルを担当し、コマーシャルが流れ出すとドイツ公営放送ZDFとオーストリア国営放送ORF、そしてスイスのスポーツ放送の3局を行き来し、実況放送を追った。

結論からいうと、日本代表はベルギーチームより体格、体力で負けるかもしれないが、その走行力とチームプレーでは負けていなかった。娘も「W杯ロシア大会のこれまでの試合の中で、ベルギー対日本の試合が最高だった」という。娘の感想は家人全ての思いでもあった。

「赤い悪魔」と呼ばれ、その攻撃力で相手チームを恐れさせ、新チーム結成以来22連勝のベルギー代表だ。相手として不足はない。当方は、日本代表が勝つチャンスを逃したことは残念だったが、勝敗云々より「日本代表は本当によくやった」と感動した。

日本代表が後半開始直後、2点を挙げて先行した時、家人たちは「ひょっとしたら……」という思いが湧いてきた。試合を報道していたアナウンサーも、「日本代表が赤い悪魔を倒せば、ドイツのW杯グループ戦敗退以上のサプライズだ」と少々興奮気味に語っていた。

W杯では国際サッカー連盟(FIFA)のランキングは余り参考にならない。FIFA第3位のベルギー代表対61位の日本代表の今回の試合はそのことを物語っている。

ただし、ブックメーカーはベルギーの圧勝を予想していた。例えば、日本代表チームの勝利に10ユーロを投資したファンがいたとする。オッズ(掛け率)では日本代表が勝てば10倍の100ユーロとなる。それほど、ベルギーの勝利は当然と受け取られていた。ビジネスはあくまでも数字に拘るからだ。

しかし、W杯には独自のルールが支配している。ロシア代表が元W杯覇者、元欧州選手権王者のスペインを破ったのはその典型的な例だ。ロシア代表はイレブンのほか、ホスト国のサッカーファンという12人目の選手がイレブンと共にピッチで戦った。ロシアの選手がスペインのぺナルティエリアに入ると、ロシア人ファンの歓声が唸るような声となってピッチに跳ね返ってくる。

ZDFでは現役時代ゴジラと呼ばれていた元ドイツ代表の名GKオリバー・カーン氏が試合前、ベルギーの圧倒的な勝利を予想し、アジアから唯一ベスト16に進出した日本代表には辛い点数を付けていたが、試合後、「日本代表は予想外に強かった。完全に脱帽した」と述べていた。それほど「青いサムライ」は奮闘した。

ちなみに、テレビでコメンターとして登場する欧州サッカー専門家や元選手たちの日本チームへの評価は余り高くない。彼らからは、「アジアのチームが欧州のチームに勝てっこない」といった傲慢さすら感じることがある。その一人、カーン氏は試合後、「日本には敬服する」( Ich ziehe meinen Hut vor Japan )と日本代表を見直すコメントを発した。多分、カーン氏だけではなかっただろう。

当方がまだ日本に住んでいた時(40年前)、スポーツといえば野球と相撲だった。サッカーはマイナー・スポーツで余り知られていなかったが、欧州では南米と同じように、サッカーこそ最大のスポーツだ。

世界最高レベルの選手が集まる「欧州チャンピオンズリーグ」では実質的にはW杯を凌ぐ最高のサッカーが見られる。リオネル・メッシ(FCバルセロナ所属)やクリスティアーノ・ロナウド(レアル・マドリード所属)のプレイが1年中、身近に見られるのだ。欧州に住む邦人には日本食を十分堪能できないハンディはあるが、世界最高水準のサッカーをじかに享受できる恩恵があるわけだ。

日本代表チームの個々の選手の評価はスポーツ紙に委ねる。4年後のW杯が楽しみになった。当方の感想を少し書く。攻撃力、守備力は着実に向上している、課題はやはりGKの育成だろう。イタリア代表だったユヴェントスFCのGKジャンルイジ・ブッフォンのようなチームの要となるGKの育成だ。GK川島永嗣は頑張ったが、2、3の致命的なミスがあったことも事実だ。

ロシア大会もいよいよベスト8の戦いに入る。2018年の夏、最高のプレイを見せて海外居住の邦人をも喜ばせてくれた日本代表に感謝すると共に、さらなる飛躍を期待したい。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2018年7月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。