「財政ファイナンス」が民主主義を破壊する

7月10日、政府は2019年度予算の概算要求基準を閣議了解した。来年(2019年)10月に予定されている消費税率の10%への引き上げによる景気後退を防ぐという理由で特別枠を拡大し、概算要求の上限を撤廃したため、概算要求の合計は100兆円を突破する見通しだ。

安倍政権がこういうバラマキ財政を続けられる原因は、日銀が国債を買い取る「財政ファイナンス」を続けていることだ。これは中央銀行がお札を印刷して財政赤字を埋めることで、従来はタブーとされていたが、日銀の黒田総裁はそのタブーを破った。

財政に「フリーランチ」はあるのか

もちろん日銀は、公式には「財政ファイナンスをしている」とは認めていない。日銀が(金利のついた)国債を買い取って(無利子の)日銀券に変えることは法的には可能だが、それによって無限の財政赤字が可能になるからだ。

政府は通貨を発行できるので、原理的にはいくらでも借金を増やすことができる。だが日銀が「財政ファイナンスをやっている」と認めると、国債が暴落して金利が上がり、それをまかなうために通貨供給が無限に増えてハイパーインフレが起こる――というのが従来の通念だった。

したがって財政ファイナンスは「禁じ手」とされていたのだが、今の日本では金利上昇もインフレも起こらない。結果的には、日銀が国債の45%以上を保有する先進国に類をみない状況になったが、黒田総裁は後に引けない。インフレ目標2%が達成できないからだ。

これについて若田部副総裁は「財政ファイナンスには問題ない」という持論の持主だ。彼は著書『ネオアベノミクスの論点』で、「デフレからの脱却には、財政ファイナンス的な政策がじつはもっとも効果的なのです」(p.96)と書いた。

2015年2月5日の朝日新聞のインタビューでも、若田部氏は「政府と一体と考えられる日銀が持っている国債260兆円は国のバランスシートから落とせる」ので日銀が国債を買うことには問題がない――という。それは経済学の「フリーランチはない」という鉄則に反するのだが、正しいのだろうか。

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