マスコミでは「世界中で異常気象が増える環境危機だ」という類の話が増えていますが、これは科学的データで確認されていません。2018年7月15日の記事の再掲です。
最近の集中豪雨について「地球温暖化が原因だ」という話がよくあるが、本当だろうか。これについては国連のIPCCが、2011年に気候変動への適応推進に向けた極端現象及び災害のリスク管理という報告書を出し、熱帯低気圧(台風や集中豪雨)については、次のように書いている。
いくつかの地域では、激しい降雨の発生数に統計学的に有意な傾向が出てきている。発生数が減少している地域よりも増加している地域のほうが多い可能性が高い。但し、これらの傾向は地域間及び地域内でのばらつきが大きい。これまでの観測能力の変遷を考慮すると、熱帯低気圧活動について、観測されている長期的な増加はいずれも、確信度は低い。
日本語としてわかりにくいが、要するに熱帯低気圧が地球温暖化によって増えたとはいえない(確信度が低い)ということだ。日本についても2017年までの台風について、気象庁は次のような図を示している。
これを見ると、熱帯低気圧の発生の頻度はほぼランダムであり、最大値は1960年代に記録している。地球温暖化が起こっていることは間違いないが、熱帯低気圧などの「異常気象」が増えたという確信度の高い証拠はないのだ。
今のところ明言できるのは、潮位が上がったことだ。今世紀末までに海岸線が数十cm上がることも確実に予想できる。それ以外の気候変動は(起こるかどうかも含めて)きわめて不確実だ、というのがIPCC第5次報告書の結論である。
大雨や台風については、気温上昇で大気中の水蒸気の量が増えると、その分だけ雨量が増える可能性がある。したがって大雨の頻度も増えていくと予想されるが、今のところ日本ではその傾向はみられない。
IPCCも被害の増える最大の原因として指摘しているのは、インフラの脆弱性である。特に途上国の都市化によって水害の被害が増えたが、先進国では人的被害は減っている。
日本でも伊勢湾台風では、5000人以上の死者が出たが、被害は確実に減っている。それは堤防や都市のインフラが整備されたからだ。今回の豪雨の教訓は、大雨で浸水するような所には住まないということだろう。