こんにちは、広島市議会議員(安佐南区)のむくぎ太一(椋木太一)です。
2020年9~11月に広島県東部(福山市、尾道市、三原市)で開催予定の現代アート展「ひろしまトリエンナーレ2020 in BINGO」(以下、「ひろトリ」)が、国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」(以下、「あいトリ」)の「表現の不自由展」のように、公金による反日プロパガンダに利用される恐れがあると、10月9日にアゴラで問題提起をさせていただきました。
(参照:『愛知の次は広島で来秋トリエンナーレ…公金投入に待った!』)
プレイベント会場の百島であの人に遭遇
この記事の掲載以降、多くの賛同のご意見、ご提案等をいただいてきました。地元の広島県民のみならず、全国各地の方々がこの問題に非常に高い関心、危機感を抱いているのだと実感しています。
皆様の熱い思いに突き動かされるように、11月16日、「ひろトリ」のプレイベントの一つである「百代の過客」の会場、尾道市の離島・百島(ももしま)へ足を運んできました。
尾道港から高速船すると、北側に名刹・千光寺、南側には瀬戸内の島々が見えました。この日は小春日和で、やわらかな日差しが海面を照らします。漁船とすれ違う光景には、日常の喧噪を忘れさせてくれるなにかがありました。
そして、船に揺られること25分、百島に到着しました。会場の旧支所は、乗船場から徒歩10分ほどの小高い場所にあります。案内板を頼りに進むと、閉館した映画館「百島東映」が姿を現しました。かつてはにぎわいを見せていた娯楽の殿堂も、今は壁がさび付き、時の流れを感じさせました。途中、島民と一人もすれ違うこともなく到着しました。
会場の入り口付近には、なんと「あいトレ」の津田大介氏がいたのです。
「なるほどね」。私は心の中でつぶやきました。
「表現の不自由展」で物議の作品が話題に
このプレイベントは、「ひろトリ」を主催する実行委員会に名を連ねるNPO法人「ART BASE百島」(柳幸典代表)によるもので、この日は美術史や社会学を専門とする大学教授ら3人が、「芸術とプロパガンダ」をテーマに対話しました。
会場となった旧支所には、20~30歳代の男女を中心に約50人が集まっていました。対話では、「プロパガンダ」の歴史や実例に触れたのち、「表現の不自由展」に出品していた美術家・大浦信行氏のコラージュ作品「遠近を抱えて」(下記YouTube参照)について話題が移りました。これらのコラージュは、昭和天皇の頭からきのこ雲が出ていたり、女性の下半身が昭和天皇の顔の近くにあったりと、昭和天皇を揶揄しているとも見える版画の作品です。
なお、プレイベントの一環で、百島でも展示されています。この対話企画では、観客による質問に答える時間もありました。後述しますが、本質的な部分を突く声もありました。約2時間半の対話企画を終え、帰りのフェリーに乗るため、行きと同じ道を戻ります。
「このままではいけない」。西の山に沈みゆく太陽を眺めながら、そんな思いが頭の中を巡り、焦りからか、気が付くと足早になっていました。
「公金が流れていない」の言い分に違和感
「ひろトリ」は一体、この先どうなるのか−–。これこそ、広島県民をはじめ、多くの皆様の最大の関心事であり、解決すべき課題です。この課題に取り組む広島県議によると、県の幹部職員らが11月18日、県議会サイドに状況説明にきたということです。しかし、その内容は「ゼロ回答」という印象でした。
ただ一つ、気になったフレーズがあります。「プレイベントの一部には公金は出ていない」と説明していたということです。16日の対話企画中、柳氏も「トークイベント(対話企画)に公金は出ていません」「自費です」と何度も強調していました。
ところが、「ひろトリ」の公式ホームページでは、プレイベントとしてこの対話企画が紹介されています。また、百島で配布されたパンフレットには、対話企画の紹介欄の下に、大浦氏らの作品が掲載されています。一般人がこの公式ホームページやパンフレットを見て、「このプレイベントの一部は公金が投入されていない。独自だから許容しよう」と判断できるでしょうか。
誤認させる恐れが極めて高い構成ですから、「公金が流れていない」という両者の言い分は、その場しのぎにしか聞こえないのです。
主催者と県に見え隠れする変化
このように、厳しい現状ですが、変化も感じ取っています。「ひろトリ」問題が明らかになって以降、多くの方々が様々なアプローチを試みました。行政サイドの回答は当初、「展示内容には関与しない」というようなものでした。
ところが、最近では、県は、「芸術祭の展示内容等は、いただいたご意見も考慮して慎重に検討したい」と返信するようになっています。
また、このNPO法人のプレイベントを告知するページから、助成企業・団体等の名前が消えました。名前が記載されていた団体の一つは、「お客様の声を踏まえて」表示を外すことを申し入れたといいます。こういった点は、大きなヒントとなるでしょう。
さて、これらの実情を踏まえ、県は今後どう対応したらいいのか、次回私の考えを述べたいと思います。
(次回は23日を予定しています)
むくぎ(椋木)太一 広島市議会議員(安佐南区、自由民主党)
1975年、広島市生まれ。早稲田大学卒業後、出版社勤務などを経て2006年、読売新聞西部本社に入社。運動部記者時代はソフトバンクホークスを担当し、社会部では福岡市政などを取材した。2018年8月に退職し、2019年4月の広島市議選(安佐南区)で初当選。公式サイト。ツイッター@mukugi_taichi1