W杯フランス優勝&旭日旗がパリ祭パレードの先頭に

八幡 和郎

W杯大会公式FBより:編集部

フランスがW杯に優勝してパリを始めフランス全土は歓喜に包まれている。とくに、フランス革命記念日(パリ祭)の翌日であるから、2日続きの前代未聞のお祭りである。このところ、経済も好調、マクロン大統領の外交も絶好調で、トランプ大統領とヨーロッパで唯一コミュニケーションができる指導者といわれ、あと4年も大統領任期があり、さらに、再選される可能性が強いとみられているので、ほぼ10年間はヨーロッパはマクロンの天下だとみられている。

W杯の勝利は、フランスの社会統合にとって良い影響を及ぼすと見られる。アフリカやアラブの移民主体の選手達がフランス国家のために栄光をもたらしてくれたのであるから、かつてのジダン選手の活躍と同様に、誰しもが幸福なのだ。

とくに、エースのキリアン・エムバベ選手は、パリ19区生まれ、父親はカメルーン出身のサッカー指導者、母親はアルジェリア人の元ハンドボール選手で、ルーツが違う両親がフランスで出会いもうけた子なので、フランスへの帰属感も単なる移民よりしっかりくる。本人も子供のときからフランス代表になることをめざしてラマルセイエーズをつねに口ずさんでいたと言うから嬉しい。

学業も素晴らしく優秀で、少年時代にティエリ・アンリらを輩出したフランス一の育成の名門、クレールフォンテーヌ国立研究所で育てられた。奴隷として連れてこられたアメリカの黒人はともかく、普通は、移民がその移民先が好きで憧れていたというのでなければどこの国でも歓迎など誰もしたくないのである。

やはり大活躍したグリーズマンの父方はアルザス人、母方はポルトガル系である。
W杯の優勝は経済効果もたいへんなものらしい。いちばんの儲け頭はピザ屋で大会期間中の売り上げは150%増、ビールやテレビの売り上げも50%伸びている。

革命記念日のパレードの先頭で、自衛隊が日章旗と旭日旗を掲げて行進

フランス大使館ツイッターより:編集部

さて、安倍訪仏中止が残念なことだったことは、すでに「安倍訪欧中止で世界は大きなものを失った」で書いた通りであるが、昨日、行われたフランス革命記念日のパレードのニュースが入ってきた。

パレードは、シャンゼリゼ通りを舞台に行われ、凱旋門が起点で、コンコルド広場が終点。その正面に貴賓席が設けられ、そこに大統領夫妻と主賓が座る。昨年はトランプ大統領が単独で主賓だったが、今年は安倍首相(代理・河野外相)とシンガポールの首相だった。

パレードは、まず、頭上を戦闘機やヘリコプターなどが飛び、続いて、行進で、徒歩もあれば戦車など車両もある。

昨年は、アメリカ兵が先頭だったが、今年は日本の自衛隊と、シンガポール軍だった。日本は七名の男女の自衛官が日章旗と旭日旗を掲げて堂々の行進。サッカーのスタジアムと違って某国民が怒ったってなんともならない。

今年、日本が招かれたのは、ふたつの意味で大きな意義があった。ひとつは、今年が第一次世界大戦終戦(1918年11月11日)から100周年だったことだ。

フランス人にとって、単に世界大戦といえば第一次世界大戦である。この戦争で日本は連合国の一員として参戦し、旭日旗を掲げて、南太平洋のフランス領を守り、地中海に軍艦を派遣した。

このために、毎年の休戦記念日(フランスでは革命記念日に次ぐ重要な祝日)には、凱旋門広場での式典に日本は連合国の一員として参加する。

そののちに開かれた、パリ講和会議に日本は、西園寺公望、牧野伸顕、近衛文麿、吉田茂、芦田均、松岡洋右、有田八郎、重光葵らの代表団を送っている。

この会議で慣れない日本代表団は大活躍というわけには行かなかったが、フランス首相クレマンソーが学生時代に西園寺公望と交友があったこともあってよしなに計らってくれたし、ここでの経験は、そののちの国際会議において役だった。

この記念すべき年にあって、日本が明治維新以来、第二次世界大戦のただ一回の迷走を除いては、つねに、フランス、そして、英米と同じ側にあったことを思い起こしてもらうことは良いことだ。

また、最近、日仏の軍事協力の進展は顕著で、両政府は13日午後、自衛隊とフランス軍が物資や役務を融通し合う物品役務相互提供協定(ACSA)に署名した。

これは、太平洋やインド洋、さらには地中海にまで勢力を広げようとしている中国に、日本、フランス、オーストラリアが連携してあたる協力関係ができあがりつつあるからだ。もともと、フランスとオーストラリアが太平洋では対立していたが、中国という共通の心配の種を前に協力が進み、そこに日本も連携していくことになったわけだ。

こうしたことは、日仏間のさまざまな歴史を知るものにとって、実に感慨深いものなのである。

しかし、それにしても、野党の妨害で、せっかくのこの画期的なイベントに安倍首相が出席できなかったことは惜しまれる。こうした活動を「外遊」としか捉えられない政治家や政党は存在価値がないのでなく明白に有害であるとしか、いいようがない。

なお、日本、フランス両政府はマクロン仏大統領が10月に来日し、日仏首脳会談を行う調整に入ったそうだ。