小学校の熱中症事故はどうしたら防げたか --- 勝沼 悠

寄稿

NHKニュースより引用:編集部

愛知県豊田市の小学校1年生の男子児童が校外学習中に熱中症になり亡くなるという痛ましい事故が起きました。猛暑の中で90分の屋外での活動を中止しなかったという判断、児童の具合いが悪くなった後の対応等、学校の対応に多くの問題点があったことは明らかです。教室のクーラー設置は今回の事故とは直接は関係ありませんが、児童の体力をじわじわ奪っていたという間接的な関係もありそうです。現在の暑さに合わせた熱中症を予防する学校の活動の規則づくりは必須でしょう。それは体育や部活動にも及ぶものでなければいけません。

と、ここまでは多くの人が思うことでしょう。改めてニュースを読んで、私にはもう少し気になることがありました。

校外学習の小1児童が熱中症で死亡 愛知 豊田

報道によると、児童は校外活動の行きの段階で歩くのに遅れて「疲れた」と訴えていたそうです。この時どれくらい具合いが悪かったのか、活動中はどうだったのかは報道されている情報から知ることはできませんが、行きの段階で熱中症に近い状態になっていた可能性は高そうです。死亡事故につながった一因に、熱中症になってからの治療が遅かったことは充分に考えられます。なぜ、行きや活動中の段階でこの児童を学校に帰して休ませるという判断ができなかったのか気になります。

報道からはもう一点、気になる数字があります。この学校の1年生の児童数が約110名という数字です。1年生は35人学級が上限なので、4クラス編成だったと考えられます。何人の教員が引率していたかは報道では発表されていませんが、おそらく4人から6人程度だったのではないかと思われます。児童の具合いが悪くなった時に、一人の先生がその児童を学校に戻して残りの先生で110人の1年生を見るという選択はしづらかったのかもしれません。

少し極端になりますが、世界で最も教員が手厚いオランダのケースでこの場合を考えてみましょう。オランダでは一クラスの人数は20人程度です。110人なら6クラスで担任は6人。さらにアシスタントの先生が一人いて、20人のクラスを常に二人の先生が見ている形が主流です。なので、110人の校外活動なら6クラス×2で12人程度の教員が最低でもつくことになります。この人数なら途中で調子を崩した児童に一人の先生がついて学校に戻すという選択も容易にできるでしょう。

実は、世界では一学級の児童数は20人程度が平均となっています。日本でも40人学級ながら1年生のみは35人学級として少人数学級としていますが、世界的に見ると全く少人数学級になっていないのです。学級の児童数を減らすことはきめ細やかな学習をすることが目的ですが、不測の事態が起きた時に臨機応変に対応がしやすいという利点もあるでしょう。

また、今回のような事故の再発を防ぐ為に猛暑日の活動や緊急時の対応のガイドライン等を各学校でつくることになると思いますが、そういったことも教員のマンパワーなくしてはできません。教員が多忙状態では事故を防ぐ為のガイドライン作成にも響くことは想像に難くありません。今回の事故では猛暑の校外活動の是非、臨機応変な決定など多くの学校が抱える課題が見えますが、児童数当たりの教員が少なすぎる問題についても多くの方が考えていただきたいと思います。

勝沼 悠   専門健康心理士
桜美林大学大学院修了後、15年に渡りスクールカウンセラー、教育相談員など、教育現場や医療現場で心理職として働いています。