日銀は長期金利操作目標の柔軟化を検討と報じられ、ドル円と債券先物が下落

時事通信は20日夜に「日銀、長期金利目標の柔軟化検討=一定程度の上昇容認-7月末会合で議論」とのタイトルの記事を報じた。

「日銀が、大規模な金融緩和策で「0%程度」としている長期金利の誘導目標の柔軟化を検討することが20日、分かった。一定程度の金利上昇を容認する。」(時事通信)

また、ロイターも20日夜に「日銀が金融緩和の持続性向上策を議論へ、長期金利目標の柔軟化など=関係筋」とのタイトルの記事を報じた。

この記事によると、

「日銀は30、31日の金融政策決定会合で、鈍い物価動向を踏まえ、物価2%目標の実現に向けて金融緩和策の持続可能性を高める方策の検討に入った。金融緩和政策の長期化が避けられない情勢の中、金融仲介機能や市場機能の低下など副作用の強まりに配慮し、現行の長短金利操作付き量的・質的金融緩和における長期金利目標やETF(上場投資信託)など資産買い入れ手法の柔軟化などが選択肢になるもようだ。」(ロイター)。

私も13日に「日銀は異次元緩和による副作用の軽減策を検討か、日銀の英断を期待したい」とヤフーニュースにアップしたのだが、日銀は期待に応えてくれそうである。

この記事のなかで、「7月の決定会合で物価が上がらない要因を再点検し、このまま異次元緩和を続けて行くことによる副作用についても検討し、副作用を軽減しつつも大胆な緩和を継続するための政策について検討してくる可能性がある。」と指摘したが、この見方は間違ってはいなかったようである。

また、「ここにきて日銀の国債買入の減額などに為替市場が過剰反応してこなくなるなど、微調整イコール円高との認識が後退してきている状況も修正を行いやすくしているのではなかろうか。」とも指摘したが、20日の夜にドル円は112円台半ばから111円台半ばに下落していた。この要因としては、トランプ大統領によるドル高牽制発言が影響との見方もあるが、上記の時事やロイターの記事による影響もあったものとみられる。それでもこの程度の影響でいまのところ収まっているとの見方もできる。ただし、23日の東京時間での動きにも注意する必要がある。

そして、ここにきて毎日数銭しか動いていなかった債券先物が20日のナイトセッションで久しぶりに大きく動いた。ナイトセッションの寄付は150円97銭、高値150円98銭、安値150円41銭、引け値150円49銭となっていた。値幅57銭ということで、ナイトセッションどころかザラ場中でも、これだけ動いたのは今年3月2日の60銭値幅以来となる。このときは黒田日銀総裁の出口発言に過剰反応していた。

一定程度の金利上昇を容認するとなれば、債券先物のある程度の調整は入るはずであり、10年債利回り、つまりの日本の長期金利にも上昇圧力がかかる。ただし、まだ検討するかも、という段階でもあるため、0.11%以上に上昇した際には日銀は指し値オペを実施してくる可能性がある。

いずれにしても

「8月には何らかの調整を日銀が行ってくる可能性がある。国債やETFなどの買入額の柔軟化、そして長期金利コントロールの柔軟化などが候補となるのではないかと思われる。金融機関の収益など考慮するとマイナス金利政策をまず止めるべきと思われるが、これについてはややハードルは高いのではなかろうか。いずれにしても日銀の英断を期待したいところである。」(下記13日の記事より)

「日銀は異次元緩和による副作用の軽減策を検討か、日銀の英断を期待したい」


編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2018年7月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。