東日本大震災後の民主党政権によって、再生可能エネルギーの1つである太陽光発電の普及政策が強力に推し進められた。その結果もあり、現在多い日には再生可能エネルギーの比率が5割を超える日も登場している。九州電力では7割を超える日もある。
再生可能エネルギーが増えることは良いことばかりと思われがちであるが、太陽光発電の出力制御(電力会社による太陽光発電の買取ストップ)のメカニズムがつくられて運用されている。なぜならば電力供給において最も重要なことの1つは安定供給であり、天候などによって電力供給に幅ができてしまう太陽光発電はそれに不向きな電源だからである。現在、太陽光発電の発電量に合わせて火力発電の比率を変えようとすると、火力発電におけるコストが激増してしまう。
この対策として蓄電池の開発推進や、揚水発電の活用が唱えられている。ここでは、蓄電池の話ではなく揚水発電に着目してみよう。揚水発電は、高低差がある場所の上部と下部に貯水池をつくっておき、電気が必要な時に上部から下部へと水を流して発電をする。一方で電力が余っている時に、下部から上部へと水をくみ上げておくというものである。太陽光発電で電力が余っている時に揚水発電所の下部から上部へと水をくみ上げることで、巨大な蓄電池の役割を果たすことができる。
ところが、太陽光発電が増加する現在において揚水発電所を増加させることはなかなかに困難である。それは揚水発電所がダムで行われるという性格上、ダム建設による自然破壊や地域社会の解体などのリスクを抱えているからである。
またこの解決策として行われた、沖縄での海水揚水発電(沖縄やんばる海水揚水発電所)の試みも頓挫してしまった。貯水池の下部から上部へとくみ上げるコストの高さによって、揚水発電が経営的に軌道に乗らなかったためである。
しかしながら沖縄でのこの失敗は、今後の海水揚水発電実現に向けての大きなヒントを与えてくれる。沖縄には原子力発電所がなく、太陽光発電も途上で、火力発電によって海水の汲み上げを行なっていた。これが失敗したのである。
一方現在、全国には大量の太陽光発電が広まっている。そしてその太陽光発電の出力制御をするくらいならば、一定量以上の太陽光発電の買取価格を更に下げても良いではないであろうか。格安の太陽光発電が利用できるならば、海水揚水発電を全国に大量に設置できるほどにペイするはずである。太陽光発電と揚水発電とはセットで考えるべき電源であり、国はこのセットでの考えに基づいて枠組み作りを急ぐべきである。
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宮地 英敏 九州大学記録資料館准教授
東京大学文学部卒業、同大学院経済学研究科修了。博士(経済学、東京大学)、専門は日本経済史・日本経済論。
共著『近代日本のエネルギーと企業活動』日本経済評論社、など。