二階幹事長、「差別」「偏見」も「人それぞれの人生観」ですか?

常見 陽平

二階俊博幹事長(自民党サイトより:編集部)

自由民主党杉田水脈議員の「LGBTは生産性がない」発言への怒りは燎原の火のごとく、燃え広がりつつある。毎日新聞、朝日新聞が記事に取り上げた。毎日新聞は社説でも取り上げていた。TBSラジオ「Session-22」では荻上チキ氏が問題点について「マジレス」。先日、杉田水脈氏の主張がいかに荒唐無稽で笑止千万の妄言であるかをブログに書いたところ、大反響で。朝日新聞、週刊誌などから取材依頼を頂き。本日、私がレギュラー出演しているBayfm『POWER BAY MORNING』でも取り上げた。パーソナリティーのさわやかで温厚な光永亮太氏も怒りに震えていた。

拙稿で指摘したように・・・
杉田水脈衆議院議員の『新潮45』への寄稿は不適切発言の特盛だ

これは、党派性を超えて問題にするべき件である。いや、このエントリーを書いてから私のTwitterアカウントにはネトウヨから「杉田水脈氏への言論封殺だ」「政治利用はやめろ」などのコメントが殺到した。ざっと数えたが100件を超えていた。

拙稿を読んで頂けばわかると思うのだが・・・。杉田氏の主張は差別、偏見そのものであり、その論拠も瞞着、欺瞞に満ちたものである。そして、反自民の私が珍しくエールをおくっており。自民党の中にはLGBTに関する理解を啓蒙してきた議員が多数いるのは事実である。

しかし、そのエールを私は撤回したい。二階幹事長が杉田水脈氏を擁護するかのような発言をしたのだ。

朝日新聞、毎日新聞などが報じている。
杉田水脈氏の寄稿、二階幹事長「人それぞれ人生観ある」:朝日新聞デジタル

この猖獗した時代に、私はこの檄を叩きつける。一市民として、警鐘を乱打したい。

報道によると「人それぞれ政治的立場、いろんな人生観、考えがある」「右から左まで各方面の人が集まって自民党は成り立っている。(政治的立場での)そういう発言だと理解したい」「当事者が社会、職場、学校の場でつらい思いや不利益を被ることがないよう、多様性を受け入れていく社会の実現を図ることが大事だ。今後も努力していきたい」と発言したという。看過することのできない発言である。

おっしゃる通り、世の中には右も左もいてもいい。私のような左翼も、今日も息をしていられる。

しかし、「事実」には右も左も関係ない。まず、彼女の考えの前提となる事実がいかに欺瞞に満ちたものであるかを確認しておきたい。前出の私のエントリーでも検証を行っている。これに関して私が知る限りもっとも丁寧に説明したのは7月23日(月)に放送されたTBSラジオ「Session-22」での荻上チキ氏のコメントだ。彼は他の日でもコメントしているが、まずはこれを聴いて頂きたい。

【音声配信】「“マジレス”の必要あり~自民党・杉田水脈議員のLGBTに関する『新潮45』原稿に対し、荻上チキが渾身の応答」2018年7月23日(月)放送分(TBSラジオ「荻上チキ・Session-22」)

また、「差別」や「偏見」を「いろいろな人生観」で済ませていいのだろうか?言論の自由というものがあるが、「差別」や「偏見」はその範囲内にあるのかという論点がある。二階幹事長は、この徹頭徹尾欺瞞に満ちた論考を「いろいろな人生観」だというのか?その真意を問いただしたい。「いろいろな人生観」なる普遍性を装った美しい言葉で収拾をはかろうとする姿勢に強く抗議する。我々は日本国民である前に人間である。人間のことなど歯牙にもかけぬ傲慢な言動だ。延命のあがき、破廉恥な居直りのようにしか見えないのは私だけだろうか。このような火消しの策謀の貫徹など、絶対に許してはならない。

一方、杉田水脈議員にはゲイと名乗る男性から脅迫メールが届いたという。脅迫や殺害予告、ましてや殺害などはあってはいけない。杉田水脈議員の命は守らなくてはならない。ただ、ここで注意するべき点はまだ事実はほぼ明らかになっていないということだ。脅迫した人がゲイなのかはまだわからない。この1点をもってだからゲイは、だからLGBTはという話にしてはいけない。

この問題を鎮火させてはいけない。重大な決意を燃えたたせて決起せよ。闘いの檄は、怒れる市民を熱く鼓舞してやまないのだ。


編集部より:この記事は常見陽平氏のブログ「陽平ドットコム~試みの水平線~」2018年7月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。