セミナー参加者が不満を感じる理由!満足度を高めるには?

尾藤 克之

画像は書籍表紙(筆者撮影)

会社で働いていると、年齢を重ねるごとに人前で話す機会が増えていく。管理職になって部下の前で堂々と話せない自分。声が震え、手が震え、目も合わせられずにスピーチする自分。そんな姿を想像し、これではマズイと思っている人はいないか。

今回は、『身の丈セミナー講師のはじめかた』(発行:ラーニングス、出版:サンクチュアリ出版)を紹介したい。著者は、ファイナンシャルプランナーの下澤純子さん。これからセミナーで話したい、集客したい、その先のビジネスに繋げたい人の入門書になる。

何を言っているのか分からない

参加者が不満を感じる要素はいくつかあるが、代表的な理由は、講師が何を言っているのか分からないというものではないか。明後日の方向を向いてしまうと理解が難しくなる。

「学生時代を思い出しても、何を言っているのか分からない先生の授業は退屈だったはずです。講師は参加者のレベルに合わせる必要があります。初心者向けのセミナーであれば、初心者に分かるようにする必要がありますし、ある程度経験のある方に参加してもらうのにあまりに初心者向けの話ばかりだと飽きられてしまいます。」(下澤さん)

「ひどい場合だと講師が一人でしゃべって一人で笑っている、反応に困るセミナーに出くわしたこともあります。講師だけが楽しんでいて、参加者がちっとも楽しくない、こんなセミナーでは不快感を抱かれるのは当然です。」(同)

やはり講師は日々の練習が必要になる。下澤さんは、特に、本番のつもりで取り組むロールプレイング(ロープレ)については、やればやるほど話すのが上手くなっていく、是非やっておきたい練習方法と言えると解説する。

「準備不足で本番に挑むセミナーは、相手に伝わるものです。何度もロープレを重ねましょう。私の経験から考えると、7回ロープレ練習を繰り返せば、本番はかなり落ち着いて取り組める印象があります。なお、ロープレは本番同様に取り組んでこそ意味がある練習方法ですから、必ず時間を計って取り組むようにしてください。」(下澤さん)

「また、実際に声を出すことも大切です。何度か声に出して練習していくうちに、時間の感覚も掴めるようになっていきます。ロープレの段階で話しにくいなと感じる箇所は修正をした方がいいかもしれません。ロープレでできないことは本番ではできません。本番のつもりで、笑顔の角度まで考えて取り組みましょう。」(同)

ロープレをこなすことで、本番での自信につながる。では、ロープレをせず、いきなり本番をむかえるとどのような失敗が起こりやすいのか。

練習はロープレが効果的である

「まず起こりやすいのは、なんといっても時間配分での失敗です。ロープレをしていないと、どこにどれぐらいの時間を割けばいいのかが適切に管理できません。結局時間オーバーになりそうと気付いた時点で急ぎ足になるなど、落ち着いて内容を聴くことのできないセミナーとになってしまいます。」(下澤さん)

「ロープレは、仕事のクロージングの練習としても役に立ちます。設計書をつくりそのまま持っていくのと、練習してからお客様の前で話すのでは違います。やはり練習していると、笑顔の自信さえも変わってくるものなのです。保険会社では、入社後の研修でも必ずこのロープレの研修があり、そこでは笑顔まで見られます。」(同)

次はテクニカルな話になる。講師が、時間オーバーで後半急ぎ足になってきた。スライドを飛ばすようになり、「こちらの資料はあとで見ておいてください」という説明が増えきた。そして、終了予定時刻をはるかに過ぎてセミナーは終了した。

「これらはすべてタイムスケジュールのミスです。時間内に終わらせるにしても、後半で急ぎ足になってしまってもいけないのです。時間がしっかり管理されていて早すぎず遅すぎず、また途中で急ぎ足になったり、遅くなったりすることなく時間ぴったりで終わるセミナーは、それだけで完成度の高いセミナーに思えるものです。」(下澤さん)

やはり、事前準備と練習に勝るものはないようである。なお、本書の特徴は「身の丈」である。セミナー講師のなかには、実際よりもプロフィールを盛りまくる人が多いが、“自然体であること”を推奨している。また、能力を超えてまで頑張る必要もない。突然、セミナーや講演を頼まれたときに読む理想的な1冊といえる。

尾藤克之
コラムニスト