米国でカイリー・ジェナーと言えば、知らないアメリカ人女性などいないも同然です。弱冠20歳(ただし誕生日は8月10日)のカイリーは元五輪選手の父や、リアリティ・ショー番組を持つ姉に恵まれるだけではありません。カイリー自身がモデルとして活躍する傍ら、化粧品会社オーナーとして辣腕を振るい、米経済誌フォーブスの2018年版「自力で稼ぐ女性ランキング」で27位に躍り出ました。カイリーの推定資産額は9億ドルとされ、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者が23歳で打ち立てた、世界最年少ビリオネア(10億ドル以上の資産家)の記録更新を虎視眈々と狙います。
カイリー、カーダシアン一家で最年少にして最高額の資産家に?
(出所:Instagram)
そんな彼女のもう一つの重要な収益源は、写真・動画共有アプリのインスタグラムなんですね。フォロワー数が約1億1,200万人と日本の人口並みのファンを抱えるカイリー、スポンサーと提携したインスタグラムを1件投稿するだけで、ざっと100万ドルを稼ぎ出すといいますから、驚きです。推定額を元に発表した「2018年インスタグラム富豪リスト」では、堂々の1位を飾りました。2位は歌手のセリーナ・ゴメスで1件当たり推定80万ドル(フォロワー数:約1億4,000万人)、3位は日本でもお馴染み、サッカー選手のクリスティアーノ・ロナウドで同75万ドル(フォロワー数:約1億3,700万人)となっています。
ロナウドのインスタグラム、赤枠に注目。
(出所:Instagram)
同じく投稿1件当たりのギャラ推定額の伸びも、なかなか衝撃的です。例えばカイリーの場合、2017年は1件当たりで40万ドルでしたから、2.5倍に膨れ上がりました。セリーナは前年比45.5%増、ロナウドは同87.5%増とあって、まさに濡れ手に粟ですね。わざわざスタジオで拘束されずともスポンサーから広告料金を得られるとあって、積極的にインスタグラムを更新するはずです。
ここで気になるのが、インスタグラム投稿者すなわちインスタグラマーが収益を手にするためのフォロワー数でしょう。マーケティング調査会社キャピティブエイトによれば、スポンサー提携の投稿1件当たりで5,000ドルの収益を得るためには、10万人のフォロワーが必要だといいます。ちなみに動画配信サービスのユーチューブでは報酬支払いの審査基準を再生回数1万回と規定していますが、その際の収益は100ドル程度との試算も。どちらがより稼げるかは別として、写真1枚の投稿で広告料が期待できるなら、セレブリティがインスタグラムを利用するのも頷けます。
ソーシャルメディアへの投稿を通じ収益を得られるセレブなどいわゆる″インフルエンサー″と、ターゲット顧客に直接訴求したい企業の思惑が合致し、“インフルエンサー広告市場規模”は2018年に10億ドル、2019年にはさらに2倍の20億ドルへの成長が見込まれています。ソーシャルメディアを通じた広告戦略に注力する企業が増えることは、疑いようもありません。例えば時計メーカー大手スウォッチは7月29日、毎年3月に開催される世界最大の時計見本市″バーゼルワールド″の出展取り止めを発表しました。ソーシャルメディアと比較し、従来の見本市では費用対効果が十分ではないと判断したためです。
人々の集中力が持続する時間は年々短くなり、2000年の12秒から直近では8秒と推計されるなか、企業の広告戦略にインスタグラムなどソーシャルメディアがフィットしつつある証左と言えるでしょう。
(カバー写真:Disney | ABC Television Group/Flickr)
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2018年8月8日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。