オピオイド過剰摂取死亡者数、ミレニアル世代で2016年に急増?

安田 佐和子

米国と言えば、平均寿命が短くなっている先進国で唯一の国です。

これまでは、オピオイドをはじめとした薬物の過剰摂取や自殺などが中高年層の死亡率上昇の要因と指摘されてきました。しかし、ここにきて風向きが変わりつつあります。

例えば、オピオイド過剰摂取による死亡者数をみてみましょう。前述の通り、これまでは35~54歳の中高年齢層で多くみられ、2005年以降は特に45~54歳での増加が顕著となり、全体のおよそ4分の1を占めていました。プリンストン大学の教授陣が2015年、45~54歳の白人死亡率が1999年から2013年に上昇し、ヒスパニック系や黒人での低下と逆行したとの調査結果を発表しましたが、その内容を彷彿とさせます。白人中高年齢層の死亡率上昇の原因にはアルコールや薬物の依存が多くみられ、鎮痛剤の蔓延と共に大きな影を投げかけましたよね。

しかし、オピオイド過剰摂取での死亡者をめぐり、大きな変化が現れていました。

まずは、こちらをご覧下さい。オピオイド過剰摂取による死亡者が2016年に跳ね上がっています。


(作成:My Big Apple NY)

年齢別のシェアをみると、2005年から1位だった45~54歳に代わり、25~34歳が同年に25.9%とトップに立ちました。2016年の死亡者数の大幅増加の原因が同世代である可能性が浮かび上がります。


(作成:My Big Apple NY)

こちらでご説明したように、オピオイドの過剰摂取のほか、精神疾患を持つ割合でもミレニアル世代での上昇は顕著となっています。


(作成:My Big Apple NY)

自殺者をみても、45~54歳は2015年で一旦ピークアウトの兆しを見せる半面、やはり25~34歳で増加が顕著となり、2016年は10万人当たりで16.49人、0~24歳も2016年に13.42人でした。前年比でも、両者の年齢層で増加が顕著で、25~34歳で4.8%増、25~34歳で4.5%増となります。逆に45~54歳は2.9%減、55~64歳は1.4%減と改善していました。


(作成:My Big Apple NY)

こちらで指摘させて頂いたように、働き盛りの男性の労働参加率は景気後退前の水準を回復していません。オバマ政権で大統領経済諮問委員会(CEA)の委員長を務めた、プリンストン大学のアラン・クルーガー教授は、2016年に公表したレポートで「非労働人口の働き盛り男性のうち、半分が何らかの鎮痛剤を使用している」と分析していました。アヒル症候群の話を踏まえれば、エリートも精神疾患や薬物に関与しないとも言い切れず。今後、必要な人材が確保できないのならば、一連のニュースで指摘されるようにロボットやAIによる労働の代替を加速させ、格差を一段と拡大させかねません。

(カバー写真:Jan Jespersen/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2018年8月15日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。