前回までの2回で、加盟店が支払う手数料が高いこととカード決済端末代が高いために、クレジットカードがキャッシュレス化の主役になれないことを述べた。(参照①、参照②)
それではクレジットカード以外にキャッシュレス化の担い手となる支払い手段はあるのだろうか。
○○デビットといって最近まで良くTVのCMが流れていた、いわゆるブランドデビットカードは、取り扱う金融機関の後押しもあって急速に発行枚数を延ばしたが、ここにきて一時期の熱気は薄れてきているように感じられる。その理由はいくつか考えられるが、ブランドデビットカードは、決済端末や決済のネットワークをクレジットカードと同じものを使用しているため、手数料という点でみるとお店にとってクレジットカードで支払いを受けるのと変わらないということも理由の一つだろう。
キャッシュレス先進国の中国では、Alipay(アリペイ)やWeChatPayといったQRコード(二次元バーコード)を使い、専用の端末を使わない決済手段が主流となっている。そこでは加盟店手数料はゼロで、お店側は専用端末ではなく、スマホやタブレットでお客との支払いのやり取りをしたり、もっと簡単にしたい店は、お店のQRコードを店先に貼り、お客はそのQRコードのお財布宛に購入金額をスマホから送金して支払いをしている。したがって中国では加盟店手数料の問題も、高価な端末代の問題もない。
日本でもLINE Payなど、スマホとQRコードを組み合わせた決済方法が現れてきているが、いまひとつ爆発的に普及しない。これは一つには加盟店手数料の高さに問題がある。QRコードを利用していてもその裏側はクレジットカードだったり、クレジットカードと関係がなくても、利用者に高率のポイントを付与するコストやシステムの構築・運営のコストをまかなうために、手数料が高くなっていたりする。特にポイントは、利用者を増やす手段としては良いかもしれないが、加盟店を増やす効果はほとんどないか、むしろマイナスだ。
また、日本のQRコード決済が、決済の部分で収益をあげようと考えていることも中国とは違うところだ。中国のAlipayなどは決済で利益を得ようと考えていない。だから加盟店手数料はゼロなのだ。彼らは加盟店等から得る広告代や利用者に対する少額のローンの利息、さらにはAlipayなどの利用から収集したビッグデータを活用することで利益を確保している。
日本のQRコード決済がキャッシュレス化の主役になるためには、手数料以外を収益源とするビジネスモデルを考える必要がある。この点でつい最近、LINE Payが小規模店舗に対して3年間手数料をゼロとする方針を打ち出したことは評価できる。しかし、様々な事情があることは推測できるが、3年間に限るところにやはり限界があるのではないだろうか。