「断捨離」を勝手に使用してはいけません。ご注意下さい!

尾藤 克之

画像は筆者撮影による

モノが増え、仕事が遅れる元凶は、<先送り><何かあったら><もったいない>と考える一連の思考の流れ。これが、仕事の詰まりを生んでしまう。「デスクの上には進行中の仕事の書類だけを置く」「書類は基本的に読み終えた瞬間に捨てる」「名刺をとっておく意味はない」など、いまは仕事でのムダを無くすことが求められている。

今回は、やましたひでこ(著)『捨てる。引き算する勇気』(幻冬舎)を紹介したい。言わずと知れた「断捨離」の提唱者である。余計なモノを減らし、余計なコトを減らし、余計なヒトを減らすことで余力が生まれる。「断捨離」を日常に落とし込む方法とはなにか。

「断捨離」は捨てることではない

著者が、「断捨離」を世に問ったのが9年前になる。この9年間、「断捨離」を出版というカタチで、初めて世に問いかけて以来、周囲の「捨てる」行為への無理解と抵抗の中を、ずっと歩いてきたと回想している。「断捨離」のカリスマとして、多くのメディアに露出しながらも、著者は「断捨離」を提唱したことに苦しんでいたのである。

これは何に起因するのか。私なりに解釈してみたが、それは間違った「断捨離」の流布ではないかと推測する。たとえば、一般的に「断捨離」はどのような意味で解されるのか。おそらく、多くの人が「捨てること」と答えるだろう。テレビや雑誌などでも「断捨離」のことを、「捨てる」という意味で使っていることが多い。

ところが、「断捨離」は「捨てること」ではない。「断捨離」は、著者の登録商標であり、著者自身が考案・開発した自己探訪メソッドである。「断捨離」の正しい解釈は、モノに対する執着から解放されることで、心のガラクタも整理され、「今」を自分らしく生きようとする考えである。意識改革や自己改革と言えばわかりやすい。

では、「断捨離」によって仕事がうまくいくようになるのはなぜか。一般的に、仕事ができる人にはどのような特徴があるだろうか。人それぞれに想像する人物像は異なるものの、語学やスキルなどを除けばおおむね次のようなものになる。本書では、次の7項目をあげている。(1)レスポンスが早い、(2)意思決定が早い、(3)的確に話ができる、(4)慌てることがない、(5)価値観が明快である、(6)時間に正確、(7)教養が豊か。

「こうした方々は、男女を問わず、職場でも家庭でも『できる人』という評価を得ています。彼らに共通しているのは、よけいなことに振り回されず、大切なことに絞って思考し行動しているという点です。」(やましたひでこ氏)

「光栄なことに、私は『できる人』との交流が多く、彼らに断捨離についてお話しすると、『その通りですね』と共感していただけます。人生や仕事に目的を持ち、目標を設定し、最短で成果を出していくためには、よけいなことをしないのが鉄則です。」(同)

さらに、捨てることはプロセスであり、重要なことは「自分にとっての大切なモノ・コト・ヒト」を選択することだとしている。この選択ができることで上手くまわるようになる。なぜならば、よけいなことに振り回されなくなるからである。

身の回りを精査しよう

「断捨離」は著者の登録商標になるので、無断で使用すると商標権の侵害になる。権利者は、その商標を出願時に指定した商品または役務の範囲内で、独占排他的に使用することができる。他人はその名称を使用することができない。

しかし、登録商標を知らない人が勝手な解釈で「断捨離」を流布させてしまう。これまでは、著者も強く権利を主張してはこなかった。間違った解釈が広まることについて、感じた呵責はどれほどのものだったのか。察するに余り有る。

実は、私事で恐縮だが、いくつか商標を登録している。登録後のチェックなどはとくにしていなかった。運営する障害者支援団体(アスカ王国)では「ホスピタリティ認定」という商標を登録している。これは、主催する障害者支援活動において参加者を表彰したり、資格付与に使用するものである。しかし、HPで調べると、相当数の完全一致、類似の違反が確認できる。

何ら悪気はなかったとしても、相応の意図や目的をもって商標登録するのである。勝手な侵害は許されない。さらに情報を精査してから、しかるべき対処をとりたいと思う。非常に大切なことを思い出させてくれた一冊となった。著者にとってはじめての本格的ビジネス書。「断捨離」の正しい理解と、その本質を知りたい人におすすめしたい。

私は「文章術の本」を上梓した。文章が苦手でも理解しやすいように丁寧にまとめている。こちらもご覧いただきたい。『あなたの文章が劇的に変わる5つの方法』(三笠書房)

尾藤克之
コラムニスト

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