第100回という記念すべき夏の甲子園大会ですが、平成の最強野球部 大阪桐蔭高校と、公立高校の星 金足農業高校の記憶に残る名勝負となり、日本中がこの話題で湧きに湧いております。
しかしその陰で、かつての甲子園のスーパースター、清原和博さんが、ひっそりと特別記者席に現れたことを皆さんご存知でしょうか。
清原さんはこの度単行本化もされた、Numberの連載「告白」の取材の一環で、編集部の鈴木忠平さんと共に来場されたようです。
その時の模様が、昨日記事になりました。
「夢なのか、現実なのか……」 清原和博は甲子園決勝で何を見たか。(Number Web))
この鈴木忠平さんは、私たち「依存症問題の正しい報道を求めるネットワーク」で、2017年グッド・プレス賞にも選ばせて頂いた方で、清原さんを非常に冷静かつ客観的な目で、様々な葛藤や矛盾も含めて記事にされています。
また清原さんは、今月号の文芸春秋の中でも、独占手記を発表し、甲子園への熱い想いを綴っています。
PL学園で大活躍し、輝く未来を信じて疑わなかった高校時代、そしてその後もスーパースターとして活躍し続けた表舞台から、現役引退後の降りていく生き方が、上手く見つけられなかった様子がまざまざと書かれています。
私たちの仲間の中でも、清原さんほどの超ド級のスーパースターではありませんが、勉強にスポーツにと活躍していた優秀な生徒や花形選手が、怪我や故障で引退を余儀なくされたり、はたまた大学生や社会人となり、周囲のレベルがぐんと上がってしまい活躍の場を失うなど、様々な理由でこれまで打ち込んできたものがすっぽりと抜け落ち、その心の空白にアルコール、薬物、ギャンブルといった依存症が入りこんでしまう人がいます。
さらに手記によれば、その心の空白を埋めてくれた覚せい剤を失った今、清原さんは鬱と闘っているようです。
この道筋は私と全く同じです。
もちろんこれまでの数々の功績は、私となど比べることすら出来ませんが、スーパースターであろうと、一主婦であろうと、癌や糖尿病の発症に違いがなのと同じように、依存症にも違いはありません。
依存物質、依存行為をやめたあと、上手く回復のプログラムが入ってこなければ、心は空白のまま、苦しむだけです。
自分は何のために生き、誰のために存在し、この世のどこに居場所があるのか?
人間が生きていくために必要な、自尊感情が全て失われ、「自分なんか早く居なくなりたい」と思い詰めていきます。
私も、ギャンブルと買い物の依存行動が止まった後、鬱病を発症し、毎日死を考えるようになりました。
今の私からは想像もできない、真っ暗やみのトンネルの中に居ました。
清原さんには、是非とも薬物依存の回復者の仲間達と繋がって、回復プログラムを受けて欲しいと願っています。
自分のことを振り返る「棚卸」や、傷つけた人達に謝罪していく「埋め合わせ」と呼ばれる行動のプログラムは、スターのプライドがある清原さんには辛い作業でしょう。
けれどもエミネムやエリッククラプトンという海外のスーパースター達は、皆そのスターのプライドを乗り越え、仲間とプログラムに繋がり、薬物に戻らないいわゆる「クリーン」を続けています。
清原さんに出来ないわけがありません。
私も、この回復プログラムに取り組んで、劇的に回復できました。
清原さんには是非とも野球界で再び活躍して欲しいです。
あなたの魂が喜ぶ野球の世界で、居場所を見つけて下さい。
そのためにも仲間と繋がって、回復プログラムに取り組む必要があるのです。
回復プログラムは不必要なプライドを捨て、新しい絆の作り方を教えてくれます。
人の目を気にすることをやめ、堂々と生きられるようになります。
生き方を変えたことが、誰の目にもあきらかになります。
そしてそんな清原さんを目の当たりにすれば、もともとオーラのある方ですから、野球界も社会も清原さんの復帰をきっと応援してくれます。
Numberの記事の末尾はこうつづられています。
「100回目の夏、高校野球は、この日この瞬間において、1人の人間を救った。」と。
でも、この記事には未来へ続く未定稿があると私たちは思っています。
「清原の復帰は、多くの依存症者とその家族に勇気を与えた。」と。
清原さん、その日が来ると信じて、私たちは応援しています。
この世は、あなたを非難する人達ばかりじゃない。
あなたに救われる人たちが今ここにいるのです。
編集部より:この記事は、公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表、田中紀子氏のブログ「in a family way」の2018年8月23日の記事を転載しました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「in a family way」をご覧ください。