今週のメルマガ前半部の紹介です。そういえば最近、内容的に非常に読みごたえがある人事に関する書評が続いたので、全部まとめて一本のコラムとして解説しておきましょう。賃金制度や採用、残業抑制などピンポイントで理解できても、なかなか全体でリンクさせてイメージするのは難しいでしょうから。
これからの働き方がどう変わっていくかを知ることは、個人のキャリアデザインにとってもとても有益なはずです。
【参考リンク】書評「残業の9割はいらない」
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最優先でやるべきは「職務給への見直し」
まず最初に手を付けるべきは、年功賃金を全廃したうえで職務給に見直すことです。一人ひとり担当業務を明確化し、その内容に応じた賃金にするということになります。というか、他になにもやらなくてもこれだけで残業は10分の1くらいにはなります。
結果、「大した仕事してないクセに高給もらってることが明らかとなったベテラン」は実際の職務内容に見合った給与水準に賃下げします。まあ労組がゴネるなら3年とか移行期間置いてもいいですが。
そのうえで、本社の人間は四の五の言わずに全員高度プロフェッショナル制度対象とし、時給管理を完全に外します。これで少なくとも本社のホワイトカラーは残業しなくなります。なぜなら残業するインセンティブがゼロになるからです。
自分の業務範囲は明確化されており、早く終わらせたら後から仕事遅いやつの分が追加で降ってくるなんてことはもうありません。周囲に合わせて昼間はセーブするなんて必要は完全になくなります。残業代も出ないからちんたらやる理由もありません。みんな頭使って効率的に仕事して明るいうちに帰ることを目標とするでしょう。
でもきっと「高プロはイヤだ!」というオッサンもいるでしょう。仮に山田さんと名付けましょう。
山田「労働者は席に座っていた時間で支給されるべきだ。それに高プロは本人の意思で適用かどうか決められるはずだろう?」
確かにそうですね。じゃあとりあえず山田さんはさっさと店舗に配置転換して心行くまで時給で働いてもらいましょう。当然職務グレードが下がるでしょうから給料も3割くらいダウンですが、ホワイトカラーのくせに成果で勝負したがらないチキンなので当然ですね。
さて、ここで勘の良い人はある疑問を抱くはず。
「でも本社以外の支店は時給残ったままなんだから残業は減らないんじゃないの?」
ここでもやはり職務給による業務範囲の明確化が効いてきます。一人一人の仕事は明確に見える化されているため、誰がテキパキ仕事をし、誰がちんたら生活残業しているかは一目瞭然なわけです。
担当業務を定時前に終わらせて別の仕事を深堀りしている人にはポンっと高額ボーナスを、きっちり定時で終わらせて退社している人には普通のボーナスを払い、山田くんが減った給料を残業代で取り返そうと毎月50時間くらいちんたら残業してたら査定でボーナス3分の1くらいにカットしてあげればOKです。
よく「外国では残業する奴はバカと思われる」という人がいますけど、それって文化の問題じゃなくて賃金制度の差の問題ですから。業務範囲の見える化さえきっちりやれば早晩日本でも「あいつまた残業してるwwwうわだっせぇwww」ってことになりますから。
さて、業務範囲の見える化のメリットはまだあります。長時間残業の必要がなくなるので、体力のある男性中心で職場を固める必要がなくなります。また、勤続年数ではなく担当する職務内容で処遇が決まるため、キャリア途中で休職する可能性のある女性を排除する理由もなくなります。
「家庭の事情で退職します」
「はい、どうぞ。戻れるようになったらいつでも声かけてね」
(2年後)
「家庭が落ち着いたので復帰したいんですが」
「いいね!とりあえず君のスキルが活きるであろう空きのポジションはこれこれで、来年以降の担当業務は様子を見て決定しよう」
くらいのノリです。「会社を腰かけ代わりに利用されても困るんだよ。キャリアに集中するか、後進に道を開けてくれ」と妊娠したら上司に肩たたきされるなんてことはなくなります。
外資なんかだと経営幹部の半数が女性、なんて企業も珍しくありませんが、同様に銀行も優秀な女性を大々的に戦力として活用できる道が開けるわけですね。
【参考リンク】「休職後、マネージャーに昇進しました」女性役員47%、P&Gの働きかた
以降、
インターンは各事業部主導で
たぶん、それはこれから普通のスタイルになる
Q:「ニッチな業種で市場価値を意識したキャリアデザインを行うには?」
→A:「異業種に目を向けるかマネジメントの幅を広げましょう」
Q:「ベンチャーの役員経験者の市場価値は?」
→A:「評価してくれる企業とそうじゃない企業がありますね」
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編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’s Labo」2018年8月23日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください。