「採用」をテーマとした本は少なくないが、たいてい大手の新卒一括採用が中心で、実は中小企業の採用活動では大して参考にならなかったりする。
たとえば大手だとほっておいても自動的にエントリーが集まって母集団が形成されるし、紹介会社や派遣会社に頼めばすぐに人材を紹介してもらえるが、無名の中小企業だとそもそも母集団なるものをどうやって作るかが最大の課題だったりする。
求人誌や紹介会社に頼んでもいつまでたってもノーレスポンスなんてことは珍しくない。
なぜ中小企業には人が来ないのか。中小は大手とどういう風に差別化して採用活動をするべきなのか。非常に泥臭いが実務的な処方箋をバランスよくまとめているのが本書だ。
現在、採用活動は大きな転換期を迎えている。
・紙媒体の存在感低下
特に地方の中小企業はタウン誌などの無料求人誌に依存しているケースが多いが、新聞同様、手にする人の数が減り続けており、費用対効果はどんどん悪くなっている。
・求人サイトの利便性向上による一極集中
リクナビもそうだが、各求人サイトの利便性が向上し、求職者は簡単に複数の求人を比較、検索できるようになったが、結果的に条件の良好な一部企業に人が集中し、普通の企業の求人はクリックすらされにくい状況となっている。
・人手不足深刻化で紹介会社も大口優先に
よく「紹介会社に頼んだのに半年たっても何の音沙汰もない」という中小の経営者がいるが、あまりに人手不足なため、紹介会社も大口で手数料の高い大手を優先して紹介する傾向がある。派遣会社も同様で、数人という案件よりは50人単位で仕事をくれる大手を優先する。
結果として、中小企業が一人採用するまでにかかる採用コストは近年急激に上昇中だ。
そこで本書が提案するのが、間に紹介会社や求人サイトを挟まず、企業と求職者の間で直接やりとりをする「ダイレクトリクルーティング」だ。
社員の知り合いや後輩を紹介してもらう方法などが有名だが、本書では世界最大規模の求人情報専用の検索エンジン「indeed」を使い、自社の求人情報をいかにして効果的に求職者のもとに届けるかを詳細に解説する。
たとえば「歯科医院勤務」と書くだけではクリック数は伸びない。「歯科受け付け(電話対応中心)」「歯科受け付け(窓口業務中心)」といった具合に、具体的な業務内容をイメージしやすいキーワードを使い、応募のハードルを下げることで、検索エンジン表示→実際のクリック数を倍増させることも可能だ。
本書にはそうしたまめなテクニックと実際の成功例が豊富に取り上げられている。
中小企業の経営者や採用担当で「どの媒体に求人出してもぜんぜん応募がこないです」という人は、一読する価値はあるはずだ。
編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’s Labo」2018年8月27日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください。