このコラムでたぶん初めて「インフルエンサー」という言葉を取りあげたい。インフルエンザという言葉にも似た単語で個人的には、あまり好きではない用語であった(乃木坂46のファンからは怒られそうだが)。そもそもインフレエンサーとは何だ、という若者言葉を理解しない、したくない年寄りみたいな状態にいたのかもしれない。
それはさておき、ネット時代になって、確かに誰かの発言や書き込みがひとつのきっかけとなって何かが流行するという現象は起きている。そもそもインフルエンサーという言葉は、プログが全盛の時代に生まれたようで、カリスマブロガーと呼ばれる人達が何かを取りあげるとそれが爆発的に流行し、取りあげた人をインフルエンサーと呼んだ。
これはネットに限らず、テレビなどもそうであろう。マツコ・デラックスが美味しいと言ったり、NHKの「あさイチ」で取りあげられたものが、翌日のスーパーで売り切れとなることも良くあった。
しかし、ツイッターなどの匿名主体のSNSなどからは具体的な人名はわからないものの、ある人の発言や投稿がきっかけとなり、社会現象を生み出すようなことがある。
たとえば、夏の甲子園での金足農高フィーバーも準決勝あたりから、一気に盛り上がったが、これはツイッターで吉田投手がスポーツ新聞の記事の紹介のようなかたちで取りあげられ、それがリツイートされて、一気に拡がったことによる影響が大きいとみている。翌日の朝のワイドショーで取りあげられていたのも、ほとんどツイッターで話題になったものであった。
何かしら面白いことが起きて、それが社会現象化する際には、そのもとになる記事なり書き込みなりがあって、さらにそれを取りあげて拡散する人達でいて、社会現象化するのではなかろうか。もちろんトランプ大統領のように自らの権力があまりに大きく、自らの書き込みで社会を騒がせる人もなかにはいるが、これは例外といえるのではなかろうか。
過去の社会現象を生じさせるような情報と言えば、マスコミ経由のものが多く、それにはタイムロスがあった。新聞であれば一日遅れとなり、テレビのニュースやワイドショーではある程度社会現象化してからの後追いとなる。いまでは、それらに先んじて面白い情報を拡散する手段としてSNSがある。その意味では、特定できない個人のインフレエンサーが暗躍しているともいえるのではなかろうか。
株式市場では「提灯買い」という言葉が昔からある。これは提灯行列に付いていくという言葉から来ているとも言われ、何かしらの情報に先に飛び乗った人がいて、それがちょっとした価格の変動を起こし、それを見て我も我もと付いて行き、大相場となるような意味である。これはひとつ間違うと価格操作などに使われてしまうケースもある。しかし値動きをみて、何かおかしな動きをしているぞと感じついて行き、相場には何かしらあとから材料が出てくることもある。
金融市場にも、情報感覚が研ぎ澄まされた(もしくは情報を掴んでいる)インフレエンサーがいて、それによるちょっとした価格変動を見て、何かを察知し動く察知能力に優れた別のインフルエンサーが存在しているように思われる。彼らの動きを見ながら(直接見る事はできないので値動きから)相場を張るということも必要だと、インフレエンサーになりきれなかった元ディーラーとしては思っている。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2018年9月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。