大相撲は秋場所が始まっておりますが、いよいよ東京都議会第3回定例会が来る9月19日から始まります。その直前の知事定例記者会見では、本会議で争点となりそうな事柄につき語ることがが習わしであり、今日の小池百合子知事記者会も目玉施策を発表しました。(昨日の記者会見書き起こしと動画はこちら!)もちろん、私が注目していたのは、本定例会にあたり、目黒区5歳女児虐待死事件をうけて、どこまで本腰入れて可及的速やかな対策をとるのかという点でした。
人員体制拡充と専門的人材確保の問題
何かしらアクションはしないわけにはいかないであろうと予想した通り
「児童相談体制の強化に向けた緊急対策について」
が明らかにされました。具体的内容については
「児童相談体制の強化に向けた緊急対策」
をご覧下さい。
まず、体制強化を実施するということは一歩前進です。
しかしながら、私は5月には新宿区東京都子供家庭総合センター(児童相談センター)、今月は足立児童相談所を視察し、どちらも、ここ数年増員してきた相談員・福祉司がひしめき合って働いている事務室をこの目で確認しております。今後足立相談所・立川児童相談所の建て替え計画がありますが、全児童相談所における事務所の物理的確保が急がれます。
OBも含め広く専門的人材確保に福祉保健局も奔走していますが、これまでの他の部署から異動して数年経って自動的に福祉司になるという慣習は見直して頂きたいと考えます。まさに相談員は、子どもの命と、子どもの人生を預かる責任の重いプロフェッショナルの仕事だからです。建設局のように技術者を採用し専門部署で最後まで働き続けるような運用が求められます。専門性を評価されそれを活かせるということであればなりても増えることでしょう。
警視庁との虐待情報全件共有に至らず
そして、これまで喉をからして、虐待死事件直後から要請してきました「警視庁との虐待情報の全件共有」はどうなったか大変楽しみにしていましたが…
あっさり期待は裏切られました。↑にあるように「虐待に該当しないケースや児童相談所の助言指導で終了したケースを除き、リスクが高いと考えられるケースは全て共有」。これって一見耳障り良くて「フンフン、東京都エライ、知事も頑張った!」なんて聞き流してしまうんですよ。でもここにこそ縦割り行政の落とし穴があるんです。
「虐待に該当しないケースや児童相談所の助言指導で終了したケース」でその後子どもの命を脅かす事態にならないって確約できるのでしょうか?「リスクが高いと考えられるケースは全て共有」って、誰が「リスクが高い」と判断するのでしょうか?…おそらく児童相談所だと思うのですが、それでこの10年間で、都・区市町村が関与しながら虐待死によって26人もの子どもの命を取りこぼしてきたではないですか。
「警視庁との情報共有範囲の拡大」したとされる児童虐待対応の連携強化に関する協定書もツッコミどころ満載です。とくに以下の部分。
4 要保護児童対策地域協議会における連携の促進
東京都福祉保健局少子社会対策部と警視庁生活安全部少年育成課は、各地域で開催される要保護児童
対策地域協議会における代表者会議、実務者会議及び個別ケース検討会議において児童相談所と管轄警察署がともに参画し、関係機関において、情報交換、意見交換が積極的に行われるよう必要な働きかけを行うものとする。
この「働きかけ」止まりが必ずや、重大事件を引き起こす盲点となりますまいか。せめて、「個別ケース検討会議においては警視庁と全件共有する」と定義するべきではいでしょうか。明言できないから、表現が奥歯にものが挟まった表現となり、なんとか正当化・見える化するためなのか「児童の安全確認をより適切に行えるよう、安全確認の手法や、立入調査等を行う判断基準を『安全確認行動指針』として明確化」のため「安全確認行動指針」が策定されました。
これも、また目新しく素晴らしい対策に見えてしまいますが「立ち入り検査」でようやく「警察への援助要請」遅すぎませんか? 目黒区5歳女児も本来の運用の中で子どもの現認(確認)が最初できなかった時点で地元の警察官に行ってもらえば児童虐待で二度も書類送検されたことや、もしかしたら大麻所持していたことがわかったはずなのです。
すくなくともこの《安全確認の流れ》では、13年足立区のウサギ用ケージ監禁玲空斗君事件、14年警官が立ち寄ったにもかかわらず、情報を児相と共有していなかったため対処できず、父親におなかを踏みつけられて亡くなった葛飾区愛羅ちゃん事件を解決することは難しいと思います。また、ここでいう「立ち入り」に関してですが、屋上屋を重ねるようね新たな指針を作って、やった感みせて都民の怒りを鎮める弥縫策を講ずる前に現行運用で十分できることがあるのです。
指針があろうがなかろうが、そもそもの児童相談所機能であるこれらの行使をまず迅速に徹底することです。この運用が常に徹底されていれば本来問題は解決できるはず。この法的措置を即座に講じるために兵庫県明石市のように正規職員で採用した常駐弁護士を配置させない限り、この指針は絵に描いたモチ米となるのではないかと、懸念せざるを得ません。
虐待情報警察全件共有陳情の審査再開を求めて
現在、児童相談所と警察との全件共有を実施する自治体は8府県に上り、検討中の道県は11に上ると報道されています。厚生労働省では市町村と児相、虐待の兆候を共有するシステムの構築、警察庁は児童虐待記録データベース化 全国警察で共有へ動き出しています。政府も他道府県も、すでに全件共有がスタンダードになってきたというのに、なぜ日本の首都東京がここまで及び腰なのかさっぱりわかりません。
全件共有に論及しない骨抜き緊急対策となることを予見されたわけではないのでしょうが、継続審査(事実上塩漬け)となっている虐待問題に造詣の深い元警察官僚後藤啓二弁護士による、全件共有を求める「児童虐待及び虐待死の根絶に関する陳情」につき、第3回定例会中の議決を求める新たな陳情が、都議会に提出されています。(詳細過去blogご参照)。9月18日(火)厚生委員会で審査されますので、是非都民の皆様も注目下さい、私も傍聴いたします。
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厚生委員会(定数14人 現員14人)メンバー
委員長 伊藤こういち(公)
副委員長 桐山ひとみ(都)
和泉なおみ(共)
理事 加藤雅之(公)
小宮あんり(自)
委員 古城まさお(公)
藤田りょうこ(共)
龍円あいり(都)
鳥居こうすけ(都)
つじの栄作(都)
菅原直志(都)
高橋信博(自)
岡本こうき(都)
鈴木章浩(自)
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各議員の陳情審査への質疑、態度表明も確認させて頂き、皆様に報告したいと思います!
お姐総括!虐待防止条例に全件共有を反映させよう!
上田Twitterにて全件共有にむけて「小池知事と都議会へメールを出して都を動かそう!」と呼び掛けた結果、議会局と知事のもとへ多くの都民の声が届いています。ただいま担当部局への集計、場合によっては公文書開示請求をかけ都民の赤裸々らな声の実態を調査しております。かなりの数に上るようで住民意識の高さに感謝する次第です。
昨日は、合わせて
「東京都子供への虐待の防止等に関する条例(仮称)の基本的な考え方」
が示されました。同時に
「東京都子供への虐待の防止等に関する条例(仮称)の基本的な考え方についての意見募集」開始されてます。是非リンク先にアクセスして、強く強く警視庁との全件共有を求めて下さい!引き続き知事と議会へ声を届け全件共有を実現させよう!キャンペーンにもご協力のほどよろしくお願い致します。
日本全国の社会問題となった目黒区5歳女児虐待死事件を受け、鳴り物入りで本日知事も発表されたものと拝察しております。形にして積み上げた職員の労もよくわかります。それを理解しながらも、辛口の評価をしているのは、厳しく点検し先見の明をもって指摘をして、真に都民のためになる施策にカイゼン、是正させていく、これが議員のシゴトだからです。
知事と役所が出してきたものを「高く評価するものです。」で終わってしまえば、議会の議員の存在意義はないのですから。
今回一般質問はお姐の番!虐待問題を中心にまたしても、奇想天外に斬り込んでまいります!お楽しみにしてください♪
編集部より:この記事は東京都議会議員、上田令子氏(江戸川区選出、かがやけ Tokyo)のブログ2018年9月14日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は上田氏の公式ブログ「お姐が行く!」をご覧ください。