体験ルポ!出版コンペに参加してきました、その結果は?

尾藤 克之

(公社)全国出版協会によると、2017年の出版市場は、紙+電子で4.2%減の1兆5,916億円、紙は6.9%減、電子は16.0%増であることが明らかになった。市場のピークとされる、1996年の2兆6,563億円から約6割に落ち込んだことを意味している。しかし、出版不況といわれながらも出版には根強い人気があり、出版希望者は増えている。

出版にはどのような種類があるの

とくにビジネスを指南するビジネス書の市場は活性化している。サラリーマンや主婦の書いたビジネス書がベストセラーになるなどプレゼンスの高さに注目が集まっている。まず、出版には、大きく分けて3つの種類がある。

1.商業出版(費用は出版社が負担する)
2.自費出版(費用は著者が負担する)
3.共同出版(双方折半で負担。企業出版などもこの範疇)

最初に、著者(著者候補)は商業出版を目指すことになるがハードルは高い。商業出版は出版社にとって投資になり、数百万円の費用がかかるためである。これを実現するには、投資分の回収と、さらに利益が見込めると思わせることが必要になる。そのため、著名人や実績のある人、ネット発信力の強い人は有利になる。

また、最近では、商業出版スクールや出版コンサルが乱立状態にある。出版スクールは50~80万円程度、出版コンサルは200~300万円程度の費用が掛かる。しかし、出版を保障していないことからトラブルが多い。また、出版が決まっても刊行の際に、買取などの条件を出される場合もある。いずれにしても注意が必要である。

カメラクルーより撮影(当日会場内にて)


では、もっともリスクが低い手段はなにか?精神科医の樺沢紫苑医師は、「ウェブ心理塾」という著者を目指す社会人向けの勉強会を主催している。近著、『学びを結果に変えるアウトプット大全』(サンクチュアリ出版)がベストセラーとなり注目されている。7月21日、第6回出版企画書コンペに参加したのでその結果を含めて報告したい。

希望者は、「ウェブ心理塾」に入会することでエントリー可能になる。説明会、企画書の書き方セミナーなどに参加しなくてはいけないので、最初に、月額費5000円×3ヶ月分=15,000円が徴収される。プレゼンに進出できない場合、出版が決まらない場合は、退会可能なので、費用がこれ以上掛かることはない。

出版コンペに参加した感想として

まず、期日までに企画書を送付。主催者側が審査をする。今回は36名の応募があった。審査のうえ企画通過者にプレゼン機会が与えられる。今回は25名がプレゼンをおこなった。全員がプレゼンを終了したらいよいよ審査になる。イメージは『スター誕生!』に近く、出版社の編集者や出版関係者が面談したい人に採用札を上げる。

今回は、20名に札が上がった。筆者には、大手出版社を含む5社の札があがった。その後、実質的な打合せにはいる。企画書の修正やサンプル原稿の追加、印税等の条件の刷り合わせをしたうえで、担当者が編集会議にかける。昨日、9月26日にK社から出版通知をもらった。筆者の場合、幸運にも完全なリジェクトは1社も無かった。

応募者36名、プレゼン25名、採用20名。応募した人の70%がプレゼンを行い、55%が出版内定をもらう結果となった。当初、出版コンペで?と半信半疑だったが、参加することでその仕組みが理解できた。無事に出版できれば、12冊目か13冊目の刊行になる。筆者は、15,000円(5000円×3ヶ月)の投資で出版に掛かる出資を勝ち取ったことになる。

過去に参加した出版社を記載しておきたい。サンマーク出版、ダイヤモンド社、大和書房、東洋経済、ソーテック社、あさ出版、明日香出版社、集英社、総合法令出版、学研、主婦と生活社、ぶんか社、KADOKAWA中経出版など、ビジネス書の大手出版社が勢揃いしている。多くの出版社と関係を持てることは大きなメリットである。

この出版コンペは、アゴラ出版道場で講師をつとめている城村典子さんも審査に関わっている。企画の練り方、企画書の書き方、それらを勉強して、企画書コンペに勝ち抜く企画書を書けないといけない。興味のある方は情報収集をしてみてはいかがだろうか。次回のコンペは来年の夏になるが、出版業界を鳥瞰するいい機会になるだろう。

危険な「出版プロデューサー」とは

先日、元出版社に勤務していた「出版プロデューサー」のA氏に会った。本人は、一流を標榜し高確率の出版をうたっているが危険だと思った。「出版プロデューサー」の仕事は著者と出版社のマッチングにある。多くの出版社とコネクションをもつ人は強いが、有能な人は出版実績を提示する。また、自分の役割を明確に提示するものである。

A氏のように、編集者から出版プロデューサーになる人は多いが注意をしなければいけない。出版希望者は大勢いるから、情報が乏しい人に「出版させてあげるよ!」なんて甘い言葉をかけて、お金を搾取する人が増えてくる。選択する側が賢くならないといけない。

いまの時代は、出版しても売れる保証は無いから出版社の判断も早い。重版率は1~2割程度だ。人から応援されるネットワーク形成も必要になる。私がいずれセミナーで話したい内容。それは「出版業界をおおっぴらにした話」かもしれない。

尾藤克之
コラムニスト、明治大学サービス創新研究所研究員

<筆者新刊情報/4月18日発売予定>
波風を立てない仕事のルール』(きずな出版)