本日、自分が事務局長を務める自民党の金融調査会(会長:根本巧衆議院議員)で、「経済・社会構造の変化を踏まえた競争の考え方~地域金融を中心に~」を取りまとめました。
人口減少などの影響で、地域経済における金融への需要は漸減傾向にあります。一方で、供給側は地方銀行の数が数十年間ほぼ変わっていないなど、ほぼ固定している状況です。結果として需要よりも供給が大きい状況が構造的に生じてしまっており、地域金融機関の経営は極めて厳しい状況になってきています。
本来、地域金融機関は適切な金融仲介機能を果たし、また知己の産業活性化に向けて積極的な役割を果たすべきものですが、経営が厳しいことで、積極的な役割を果たせていない状況にあります。
こうした中で、今後地域金融機関が自らの経営判断として経営統合を選択するケースも増えてくることが予想されています。先日の福岡銀行と十六銀行のケースはその一つです。
本来、こうした重大な経営判断は、顧客の便益を著しく阻害しない範囲で、適正に行われるべきで、もし現状、独占禁止法上の企業結合審査が実態とあわない状況で行われた結果、こうした経営判断が歪められることがあるとすれば、それは日本経済や地域経済にとって明らかなマイナスです。
今回の経営統合の案件においては、認めるかわりに債権の縮小を求められるなどの判断がありました。少なくとも、重大な経営判断を行う以上は、何をもって「独占状態」とし、「市場」や「提供されるサービス」とは何を指すのか、等に関する法的な予見可能性がなければなりません。
特に、最近のFintechのような技術革新や、機能別・横断的な規制体系への見直しによって、様々な金融機能への新規参入の余地が増えていることを考えれば、資金需要者にとっての選択肢は急速に拡大することが予想されています。
その中で、金融機関に関する「独占」を狭い地理的範囲で同じ種別の法人の単位で厳格に判断してしまえば、資金需要者側に選択肢があるにもかかわらず、競争が阻害されているとの過度な判断により結果として地域金融機関の経営体力を奪い、金融機能が逆に提供されない事態を生み出しかねません。
それでは独占禁止法の趣旨である「公正な自由競争が行われ国民の便益が守られる」という本旨からすれば、まさに本末転倒と言わざるを得ない。
こうした観点から、独占禁止法及びその運用等に関して時代の変化を踏まえたより柔軟な見直しが必要である、というのが我々が取りまとめた趣旨です。
もしろん、グローバル企業における需要の地理的範囲をどうするのかなど、他の観点の見直しも必要というのは言わずもがなです。
独占禁止法の運用に当たって、公正取引委員会という三条委員会が客観的に状況判断・監視をすることは極めて重要だという視点に異論はありませんが、時代の変化に伴う競争環境変化を遅滞なく運用に反映することができなければ、経済的に大きな障害ともなりかねません。
2018年の「骨太の方針」「未来投資戦略」にも記されているこのポイントについて、なるべく早期に何らかの対応を行うことが求められます。政府与党の一員として、日本経済の健全な成長のために引き続き尽力してまいります。
編集部より:この記事は、自由民主党青年局長、衆議院議員の鈴木馨祐氏(神奈川7区)のブログ2018年9月27日の投稿を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「政治家 鈴木けいすけの国政日々雑感」をご覧ください。