沖縄が中国に乗っ取られる可能性を論じればデマか

沖縄国際大学の照屋寛之教授は、社民党の照屋寛徳代議士の身内らしいが、TBS「報道特集」(10月6日)で、「学生にネットの情報で、辺野古に基地を造らないと尖閣を中国にとられてしまうが大丈夫ですかと言われた。ネットの情報をうのみにしてしまって、それを学生から聞いた時、ドキっとしました。いや、そうじゃないんだと言った」などと言っている。

TBS「報道特集」より

新恭とかいう人物は、以下のように述べている(参照:MAG2NEWS『「玉城デニー当選なら沖縄は中国に」というデマを流したのか』)。

ただ、気になるものがひとつだけあった。「玉城デニーが当選すると沖縄が中国に乗っ取られる」というたぐいの言説や噂だ。「中国になりたくない」と若者が本気で言っているという情報がネット上をかけめぐった。(中略)。

それでも、極端論者はどんなときにも口を出すものである。たとえば、元東京新聞論説副主幹、長谷川幸洋氏。玉城氏の基地反対は「お花畑論」だとして、次のように書いた。

こんな人物が知事になったら、沖縄の支持者だけでなく、中国や北朝鮮は大喜びだろう。祝電どころか、祝意表明の代表団を送ってくるかもしれない。そうなったら、歓迎の中国国旗(五星紅旗)が沖縄中にはためくのではないか。光景を想像するだけでも、ぞっとする。

(9月26日、夕刊フジ・ニュースの核心)

評論家、八幡和郎氏は「アゴラ」という言論サイトに、「玉城デニーの沖縄アイデンティティは中国に無警戒」「沖縄が中国人に乗っ取られる日」と題する記事を連続投稿し、こう指摘した。

(中国が)太平洋への進出を狙っているのは、南シナ海での埋め立てや軍事基地化でも明らかである。また、中国からの移民圧力も強いし、それを中国政府は後押ししている。そういうなかで、よほど、気をつけていないと、中国は軍事拠点として沖縄を狙うだろうし、移民などを送り込んで来る危険性が高いのである。…いずれ、沖縄住民の多数派になってしまう可能性も強い。

この二人の識者に共通するのは、辺野古基地建設に反対するような人が知事になったりしたら、沖縄を虎視眈々と狙う覇権国家・中国の餌食になってしまうということである。

しかし、長谷川氏もそうだが、私も辺野古の問題と中国に乗っ取られるという話を結びつけたことなどまったくない。

私は、「イデオロギーよりアイデンティティ」というスローガンにもかかわらず、その沖縄のアイデンティティの中身がもっぱらヤマト(日本本土)、あるいはアメリカに対するものであって、中国への警戒のかけらもないことをもって危険だといっていたのである。

中国が入り込んでくるプロセスは、「移民、難民、それから、日本に帰化した華人などいろんなかたちで入り込んできて、沖縄の意思決定に影響を及ぼすような数になったり、さらに、多数派になったりしたら、ウチナンチュウは本土に移るしかなくなりかねない」ときちんと書いており、それは東南アジア諸国が悩んできたことだ。まして、沖縄の戦略的な重要性や人口が中国の千分の一しかないことを考えれば杞憂でも何でもないのである。

そうした、あくまでも中長期的な流れをいっているのであって、辺野古のことなんぞ何の関連づけもしていない。

だいたい、デマというのは事実についていうものであって、ある事象から起こる結果を予想するのは、あくまでも分析であって、それはデマという言葉にはなじまないはずだ。

それを、強引に「辺野古に反対の知事になれば沖縄が中国に乗っ取られるといっている」とかいうように捏造して騒いでいる。

しかし、それにしても、照屋教授が学生から中国の脅威について質問され、あわてた様子を思い浮かべると痛快だ。ネット世代の若者は、いくらメディアを偽リベラル勢力が独占してももう騙せないのだ。

誤解だらけの沖縄と領土問題 (イースト新書)
八幡和郎
イースト・プレス
2018-10-07