「日本銀行が量的緩和策の長期化で低迷する国債取引を活性化するため、実施日の非公表化など市場が予想しにくい買い入れオペの手法に変えていくとの見方が浮上している」とブルームバーグが伝えた。
これは本末転倒とも言わざるを得ない。財務省の国債入札や日銀のオペレーションなどは債券市場参加者への情報の透明度を強めるために、事前のスケジュールの公表や、結果発表時間の繰り上げ等の工夫が行われてきた。これが当然の流れかと思う。
日銀は量的・質的緩和で物価が上がらなかったために、いろいろと創意工夫というか手当たり次第に新たな政策をくっつけて、「長短金利操作付き量的・質的緩和」というペンとアップルをくっつけたような政策まで打ち出した。
日銀が大量に国債を買い入れるだけでなく、市場で決まるべき長期金利そのものまでコントロールしようとした。その結果、債券市場の機能は低下してしまい、債券市場でファンダメンタルに応じた適正な利回り形成ができないだけでなく、財政への警戒信号の役割もできず、市場機能そのものをなくしてしまった。
世界第二位の規模を誇る日本の債券市場が機能不全となり、金利変動という経験が債券市場参加者の若手に与えられず、市場そのものの衰退で債券関係者そのものも減少しつつある。
それならば、市場の活性化を促すと言う目的で、日銀の買入でこれまで事前に通達していたオペ日程を非公表化に戻そうなどということは、透明度を高めるという流れに逆行し、市場の不安要因を増加させ、市場への参加意欲をさらに後退させかねない。
もしそれほど債券市場の機能低下が心配というのであれば、いますぐにでも長期金利操作、イールドカーブコントロールを止めるべきである。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2018年10月11日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。