ドイツ南部バイエルン州議会選挙の投開票が14日、行われた。前回(2013年)の州議会選(有権者約950万人)で得票率約47・7%を獲得し、過半数の議席(101議席)を占めてきた与党「キリスト教社会同盟」(CSU)は得票率37・2%と30%台に大きく後退した。メルケル大連立政権のパートナー政党社会民主党(SPD)は前回選挙の20・6%から9・7%と得票率を半減し、歴史的敗北に帰した。
一方、得票率を一番伸ばした政党は野党「同盟90/緑の党」で17・5%と前回比で8・9%急増し、第2党に大躍進、それを追って、バイエルン州の地域政党「自由な有権者」が11・6%を獲得(2・6%増)、新党の極右政党「ドイツのための選択肢」(AfD)は10・2%で州議会で初の議席を獲得した。そのほか、議席獲得の得票率5%を超えた政党は自由民主党(FDP)で5・1%だった。投票率は71・8%と前回の63・6%より大幅に伸びた。州議会選に対する有権者の関心の大きさを示した。
バイエルン州議会選の結果を受け、CSUは他党と連立政権を組まざるを得なくなる。ゼーダー州首相(CSU)は、「結果は厳しいが、わが党は第1党を確保した。政権組閣の権利を得た」と述べ、保守的政党の「自由な有権者」との連立を目指したい意向を表明した。
CSU内は得票率を10・4%も下げたことにショックを受けている。党指導部への責任問題が出てくることは必至。特に、ベルリンの中央政界でメルケル首相と難民問題で対立を繰り返したゼーホーファー党首(連邦内相)の辞任を求める声が大きい。同内相は辞任の意思がないことを既に明らかにしているが、党幹部会が早急に開催され、党首の交代を含め今後の対応について議論をする予定だ。
バイエルン州はドイツの16州の中でも今年上半期の経済成長率は2・8%、失業率も同様で16州の中でも最も低いなど、経済状況はいいが、「州住民は別の懸念を抱えている」という。すなわち、有権者は殺到する難民・移民問題、それに関連した治安問題のほか、教育問題や社会福祉関連分野などに強い関心を示した。
得票率を2桁から1桁台に急落させたSPDでは、選挙の度に得票率を失う現状に党員は失望感を深め、今年4月に党首に就任したばかりのナーレス党首への批判の声が既に出ている。SPDはバイエル州議会では第5党となり、AfDの後塵を拝したわけだ。
ナーレス党首は、「結果は深刻だ。選挙結果を慎重に分析して今後の対応を考えたい」と述べ、今月28日に実施されるヘッセン州議会選の結果を受け、党の抜本的刷新に乗り出したいという。
なお、ヘッセン州議会ではメルケル首相の「キリスト教民主同盟」(CDU)は与党だが、AfDなどの躍進が予想される。結果次第ではCDU内でもメルケル首相批判が高まることが予想される。CDUは今年12月、ハンブルクで党大会を開催する。メルケル首相の後継者問題も次第に現実味を帯びてきている(「メルケル首相は指導力回復できるか」2018年10月4日参考)。 いずれにしても、第4次メルケル大連立政権はバイエルン州議会選後、CSUとSPDの連立政党内の不協和音で政権内が一層不安定となってきた。
AfDのガウラント党首は14日、独公営放送ARDとのインタビューの中で、「CDU/CSUとSPDの現メルケル大連立政権は国民の過半数の支持すら得ていない。迅速に解散し、国民にその真意を問うべきだ」と述べ、早期解散、総選挙の実施を要求している。
ドイツの政界は、ヘッセン州議会選後のメルケル大連立政権の行方にその焦点が注がれ出してきた。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2018年10月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。