少なくとも2年前であれば文章本を書くことなど夢想だにしていなかった。コンサル会社出身(経営メンバーまで登りつめたところもある)だったので、仕事術の本は上梓していた。ところが仕事術の本は競合が多くヒットにはいたらなかった。
文章術の本も競合が多い。しかも筆者は専門的に文章を学んだことが無い。国語学者のように正しい日本語を使いこなすことはできない。しかし出版社は、その絶妙なタッチがいいと指摘する。「正しい日本語が伝わるわけではない」と言われた。
10月15日、筆者11冊目の著書として『即効!成果が上がる文章の技術』(明日香出版社)を上梓するにいたった。筆者は「アスカ王国」という名称の障害者支援団体を運営しているが、同じ「アスカ(明日香)」を冠にする出版社であることからご縁を感じている。本当に有り難いかぎりである。
筆者がはじめて出版をしたのが10年前になる。出版する方法はいくつかあり、「出版企画を編集者に売り込む」「出版コンペに参加する」「自費出版をする」などの方法がある。筆者も、出版企画を依頼されることがある。
はじめての方は、企画書の書き方などわからないから、見よう見まねで書いていることがほとんどである。このときに、気になるエッジがなければボツになる。これは出版社も同じで、「いいネタ」だと思って持ち込んでも、同じ企画がすでに複数提出されていたり、売れる見込みが立てられないようなものは、ほぼボツになる。
売れる見込みとは、わかりやすく説明すると、「読者のベネフィットがあるかどうか」ではないかと思う。著者の強み、ニーズ、有力者のコネ、なども有利なポイントになるが、一番大切なのは「読者のベネフィット」になる。では、ベネフィットを説明しよう。
人の欲求(これ欲しい)を高めるには、「すぐできる」「簡単」などのベネフィットが必要になる。人は楽をしたい生き物なので「難しい」と思われてしまうと、ハードルが高く感じてしまう。これは過去に流行したキャッチコピーなどをみれば明らかである。
『レンジでチン』(クックパッド)、『ブレスダイエット』(3秒息を止めるだけ)などは誰もが知っているコピーだが、一般的になんらかの成果を得るには相応の努力と継続が必要とされる。努力の継続は大変である。そのため、取り掛かるためのハードルが低いことをイメージさせたほうが読む人には響くことになる。
ほかにも、「~を実現するには3つのポイントを抑えれば間違いない」「1日3分で実現可能な○○」などがある。「東大脳」(東大に入れる脳を簡単に鍛える)、「ビリギャル」(学年ビリから有名大学に合格)、「医師だけが~」(医師だけが知っている情報が簡単に手に入る)なども着眼点はほぼ同じである。ベネフィットが明確なのである。
「今日からできる」「誰でもできる」などはハードルを下げるための効果的なベネフィットになる。このようなハードルを下げるための表現は覚えておくと便利である。実際の再現性はさておき読む人には伝わりやすい。これは書籍に限らず、汎用性の高いテクニックとしても使える。読む人に“ベネフィットを与える”ことを心がけよう。
『即効!成果が上がる 文章の技術』(明日香出版社)
※10月15日に11冊目となる書籍を上梓しました。
尾藤克之
コラムニスト