この時期は、少数会派ですと、各会計決算特別委員会と所属常任委員会事務事業質疑が重なり、とんでもない仕事量となります。
ことに都議会史上事実上質問回数過去最多級(都議会議事録検索にて「発言者でさがす」→「上田令子」と入力→「検索実行」→「115文書、1,495発言ヒット」→何期もやっている他の議員と比べたら一目瞭然の多さですが、文書質問は加算されてないのでそれを加えると、倍近くなるのではないでしょうか。)のお姐は、要求資料も質問数も多く、頭がウニとなり、どの局へどんな質問をしたのか、しているのかわけがわからなくなるのですが、優秀な政調スタッフに支えられまして、先週無事東京都議会各会計決算特別委員会第三分科会審査が終わったとこです。
色々とキモになることがありましたが、お姐にしては質疑が少ない(笑)環境局では、これだ!というものがありました。それは「水素社会の実現」対策。確認させていただきました、ハイ。
舛添前知事旗振りのもと進められるも
水素社会の実現に向けた取り組みは、舛添前知事就任以降張り切って推進され、彼の愛する「都市外交(お姐的には都市間交流)」同様唐突感が否めずに見守ってまいりました。その後、同じく環境政策を得意分野とする元環境大臣でもある小池知事都政となり一体どう評価して、今後どうしていくのか大きな懸念を持っておりました。
というのは「水素エネルギーは環境負荷の低減、エネルギー供給源の多様化、経済産業への波及効果といった意義を有し、これを本格的に利活用する水素社会を早期に実現していくことは、資源小国である我が国にとって重要(環境局事業概要より)」とはされており、確かにそうなのでしょうが、インフラコストが膨大にかかるという点が大問題なのです。
東京都の導入状況
都は民間向けに燃料電池自動車の導入促進事業も行ってはいますが、おひざ元の交通局における燃料電池バスはどうなっておるかといいますと…2016年度に2台、2017年度に3台…5台。多いか少ないかわからない…。「都営バスに東京2020大会までに最大70台の導入を目指す!」と張り切っちゃってくれてますが背中を押していいのかどうかもわからない…。
バスだけ増やしても補給するところがなければ運用ができませんのでそこも確認しますと、現時点は江東区有明のみ。2020年1月に葛西水再生センターに新設されることが先月明らかにされましたが、結局江東区と江戸川区という、城東地区に偏っております。最大70台が、えっちらおっちら東京西部からここまで水素充填に来なければならない点がホントにエコなのか気になります。
民間利用の導入状況
では、民間利用者向け水素ステーションの状況はどうかといいますと、2017年度は定置式ステーション開設、移動式ステーションが各1か所ずつ開設され現時点は14か所の水素ステーションが稼働中。…多いか少ないかわからない…。多分少ないのかなぁと実績についての環境局の問題意識を問うと「整備費や運営費が高額となることが課題」って、そりゃそうでしょう。
お姐としては、別に成果が出ないのに、無理して増やして欲しいとは実は思ってはいないのですが、現行で支障はないのか念のため確認しますと、現行のバス用ステーション1か所を含む14か所から目標達成に向けて、さらにステーション整備促進に努め、国と協調して補助制度を実施して、境基本計画で掲げた2020年の目標35か所に向けて、着実に水素ステーションの整備を促進する!とのこと。張り切ってくれてるはいいけれど、予定は未定。実態に沿わぬ計画は見直してもいいと思うのです。
驚きの中小企業GS事業者の導入実績ゼロ
東京都や大手の取り組み状況はお分かりいただいたと思います。さらに都は「ガソリンスタンドの水素ステーション導入支援」を実施してます。これは中小ガソリンスタンド事業者に対し、相談窓口の開設や講習会などして実際のGSをモデル調査し示し運営参入への支援を行うというもの。
…江戸川区内のGS事業者様におめもじすることが多々ありますが、大手に押され今の経営だけで手一杯、という声がほとんどです。ましてやいくら補助金が出るとはいえインフラ整備に莫大な資金がかかって、燃料電池自動車も市場にまだ普及されているという状況ではないなか、都の旗振りに追随する事業者っているの?と実績を問うと
「現状では中小GS事業者による水素ステーションの設置はない」
だよね…。
重ねて聞いてみる。
現状でも経営が厳しい中小GSが積極的に水素ステーション設置に取り組むインセンティブはどこにあるの?と。
「水素ステーションの設備整備費が高額となることから、都は国と合わせて整備費の補助制度を実施しているが、さらに中小企業が積極的に取り組むインセンティブとなるように整備費の全額を補助運営費についても中小企業に対しては運営費補助の上限額を大企業より高く設定することにより、インセンティブを付与」
うん、これじゃ無理。絶対やれない。整備したところでどんだけお客様が来てくれて利益が出るかかわからないですから、中小GSが手を上げるわけがないのです。作っておしまいの役人気質が見事に現れ、日々を慎ましく生きる薄紙をはぐような利益で生き抜いている(しかもそこから納税している!)事業者においてのインセンティブはナッシングでしょう。
経済経営庶民感覚からかけ離れた答弁に眩暈にみまわれながら、「水素社会の実現」における真の需要と効果がどこにあったか、そもそもあるのかを問うてみる。
「燃料電池自動車、バスの普及と水素ステーションの整備はどちらも必要不可欠の関係にある。このため、今後も水素ステーション整備と燃料電池自動車の普及促進を図る。」
ザックリしすぎてますな…。
お姐総括!
インフラコストが莫大でも、それを過ぎると燃料電池自動車の方がずっとコストが下がることは承知しておりますが、電気自動車を選ぶ都民も多い。そんな中で、燃料電池自動車の普及がすみずみにいきわたるまで東京の日本の財源は持つのか。超少子高齢化社会が到来する約束された、あまりありがたくない2025年問題も目前。実にお姐は心配です。交通局もホントに燃料電池バスが必要だと考えているの!?知事(もはやいつの知事かも不明…)鳴り物入りの環境政策のとばっちりを食っているのではないの?ということも心配。
行政においては社会情勢の変化に合わせてその時々の知事が推進する事業は常に検証をしていただきたい!そして、議会も議会人もなんでもかんでも、一見反対や指摘のしずらい耳当たりの良い環境政策に乗っからないことです。
理想は追い続けてもどこかで現実的な判断をしなければならないのが政治家の仕事なのですから。
時の知事の思い付きお手柄環境政策に振り回されず、理想を追いかけず懐具合を最優先せよ!
編集部より:この記事は東京都議会議員、上田令子氏(江戸川区選出)のブログ2018年11月1日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は上田氏の公式ブログ「お姐が行く!」をご覧ください。