こんにちは、都議会議員(北区選出)のおときた駿です。
11月1日は、今後1年の所属予定となる財政委員会の事務事業質疑。財務局に対して入札制度や特命随意契約、都債発行などについて質問を行いました。
財務局は国で言うところの財務省。この管理職には都庁内でも切れ者と評価されたエースクラスが集まっているとも言われています。
そこで中心に取り上げたのは、2015年にも予算特別委員会で取り上げた「都債」発行について。
過去記事:
「将来世代だけがトクをしないために、黒字だけど借金しておきます!(キリッ)」は正しいのか?
https://otokitashun.com/blog/togikai/6845/
このブログに書いてある内容の繰り返しになる部分はありますが、近年、都財政は黒字化しているにもかかわらず、相変わらず都債の新規発行は毎年1,000~2,000億円ほど行われています。
国の財政法4条を見ても、地方財政法第5条でも、あくまで公債は原則「不発行」です。
但し書きとして建設公債の発行は認められていますが、当初はそれはイレギュラーな存在として位置づけられていました。
しかしながら、なし崩し的に1966年から「世代間の受益負担一致論」が叫ばれ始め、今はすっかりと建設公債(将来世代も恩恵を受けるとされる、建設物等を債権で立てること)の発行が常態化しています。
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しかしながら、これには大きく2つの問題点があります。
・社会保障費を中心に、世代間格差は開き続けている
・地方自治体には「人口移動」の問題がある
というものです。
前者はもはや指摘するまでもなく、今の日本の社会保障制度では若い世代ほど不利になる状態が続いています。
ならば、あえて都債を発行して、損をする将来世代にさらに負担を「平準化」することは理屈に通りません。前例踏襲で続けている都債発行はすぐにでもやめた方が、「世代間の受益負担一致論」にかないます。
そして後者の人口移動。
地域をまたいで人口は常に流動しています。統計データなどを見ると、都道府県間における人口移動は、10年で1割程度入れ替わるともいわれています。
これでは実際に税の負担を負った人と、その恩恵をこうむる人が一致しなくなるわけで、建設公債発行の大義が失われるのではないでしょうか。
この点について財務局に見解を求めたところ、
「東京という、人口の転出及び転入が一定程度確保されている大都市においては、社会資本整備の財源として、都債を活用することにより、受益と負担の関係が確保されやすいのではないかと考える。」
との答弁でした。
うーん、わかるようなわからないような、いややっぱりわかりません…、
「人口の転出及び転入が一定程度確保されている」から、受益と負担の関係が確保されやすいのでしょうか?
どちらも確保されているから総人口は変わらなくても、その中身の構成は変わっている可能性が高いわけで、そこに理論的な裏付けがないと都債発行の大義は主張できないように思えます。
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結局のところ、国の建設国債の理論に基づいて地方でもなし崩し的に行われている建設債の発行は、人口移動が前提とされていないためこれを裏付ける論拠が不十分なわけです。
なお上記の答弁は事前の意見交換時には局から示されず、当日委員会の場で担当部長からアドリブ(?)で出てきたものです。
その理由はなんとなく上記から推察できるところでありますが、事前に意見交換できればもう少し突っ込んだ質疑ができたのと思うので、その点は少々残念であります。
東京都は新規都債の発行額は「抑制」しつつ、あくまで発行を続けると主張しています。
小池知事らしく「ゼロ」公約の一つに「都債(新規)発行ゼロ」を掲げて実現すれば、将来世代に資する政策として高い評価を得ることでしょう(専門的すぎて地味ですけれども)。
引き続き私としては、不必要かつ論拠の乏しい都債の新規発行は停止を進言するとともに、上記の人口移動の論点についても提言をしていきたいと思います。
それでは、また明日。
編集部より:この記事は、あたらしい党代表、東京都議会議員、音喜多駿氏(北区選出)のブログ2018年11月1日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はおときた駿ブログをご覧ください。