英国の欧州連合(EU)離脱を巡り、英首相府は、英国全土を対象とした関税の枠組みが、法的拘束力を持つ離脱協定に盛り込まれる、との新聞報道を「憶測」として否定した(ロイター)。
英国のEU離脱問題が難航しているとされているが、いったい何が問題となっているのか。上記記事ではその内容が良くわからない。問題点を少し整理してみたい。
英国のEU離脱は2019年3月29日と決まっている。欧州連合(EU)と英国はこれに向け条件や手続きを定める離脱協定を交渉している。合意しても正式に協定を結ぶにはともに議会などの同意が必要で、時間を要するため10月中の協定合意を目指してきたが、いまだ合意はできていない。
何がいったいこの合意を阻んでいるのか。そこに存在しているのが、関税の問題となる。離脱協定なしに離脱すると関税を巡り混乱する恐れがある。しかし、勝手に抜けだそうとする英国に対し関税面で優遇措置をEUとしても与えづらい。そこにアイルランドの問題が絡んできている。
英国の正式名称は、グレートブリテン及び北アイルランド連合王国である。アイルランドと英国領である北アイルランドには国境が当然ある。しかし、英領北アイルランドと接するアイルランドは関税同盟と単一市場に参加しており、現在、国境には検問所や税関がない。英国とEUはこの国境開放を維持することで一致しているが、国境を管理しないでいかに通関手続きを行うことが可能なのかがネックとなっているのである。
欧州連合(EU)は北アイルランドだけを関税同盟に残すことを提案したが、メイ首相は国の一体性が損なわれると反発した。
11月4日付の英紙サンデー・タイムズは、英国の欧州連合(EU)からの離脱交渉で焦点となっている英アイルランド国境問題を巡り、メイ英首相が問題の解決につながる「譲歩」をEUから引き出したと関係筋の話として伝えた(産経新聞)。
最初のロイターの記事はこの観測を否定したとのものであった。英国のEU離脱後も英国全体をEU関税同盟に残すことが可能になれば交渉は一気に進む可能性はあるものの、それを本当にEU側が許すのか。
ただし、時間は限られていることは確かであり、11月17~18日に予定されている臨時首脳会議までに合意する、いや合意しないとの観測が入り乱れている。実質的な交渉期限は「11月まで」から「クリスマス」に延びているともされた。ただし、ここにきてやや進展もみられるようで、英国のラーブ英離脱担当相は議員に宛てた書簡で、EUとの離脱交渉が11月21日までに妥結することを示唆した。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2018年11月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。