オリックス銀行のイノベーティブな融資戦略

日本経済新聞電子版に、「オリックス銀、45年不動産投資ローン 若年層取り込み」(リンク先は会員限定)というタイトルで、オリックス銀行の45年ローンが取り上げられています。

私も取材を受け、コメントが掲載されていますが、地方銀行が不動産融資を絞り込む中、なぜオリックス銀行は、流れに逆行して融資を積極化させているのでしょうか?

その理由は融資対象になっている不動産にあると思います。オリックス銀行始めた45年ローンは、都心のワンルームマンションの購入や借り換えに限定されています。地方の一棟ものなどは、対象にしていないのです。

確かに、融資期間が35年から最長45年に長期化すれば、銀行の貸し倒れリスクは高まります。しかし、都心の中古ワンルームマンションが融資対象であれば、45年後の資産価値は、賃貸物件として稼働していれば、それなりの価値を持っているはずです。

実際、最近取り壊された都心の鉄筋コンクリート物件は、築年数が70年を超えるものも珍しくありません。しかも取り壊しの直前まで、賃貸物件としてしっかり稼働していたのです。建築技術がさらに進歩した、新しい物件であれば、70年どころか100年以上できる可能性があります。

不動産の価値を決めるのは建物の経過年数よりも、立地です。人口が減少していく地方にある新築物件よりも、東京23区の築古物件の方が、収益の安定性が高く、物件価値も高く落ちにくいと言えるのです。

だから、オリックス銀行のエリアを絞って、リスクを取ってマーケットシェアを広げる融資戦略は、極めてスマートで理にかなったやり方といえるのです。

ローン期間が伸びれば、元利均等返済の利息部分の比率が高くなります。これは金融機関の収益上はプラスになります。リスクよりも収益メリットの方が大きければ、貸金ビジネスとしてリスクテイクする価値はあるのです。

伝統的な日本の銀行が機能不全に陥る中、ノンバンクから銀行に進出したオリックス銀行が収益を高めていく。

斬新なアイディアで既存の業界秩序を変えていくのは、横並びの既存勢力ではなく、やはり別の業界から参入したイノベーターにしかできないことなのかもしれません。

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所、株式会社資産デザイン・ソリューションズは、国内外の不動産、実物資産のご紹介、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また、投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2018年11月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。