きっかけは、小児科医の小暮裕之 先生が「豊洲で病児保育に困ってる親御さんがいっぱいいるんですよ!」と熱く語ってきたことです。
そりゃあフローレンスも13年間病児保育やってますし、発祥は江東区なんで、その辺りは知っています。現にフローレンスの訪問型病児保育ユーザーもめっちゃ多いので。
そんな風に答えたところ、
「有明こどもクリニックがバックアップするので、フローレンスさん、病児保育室やりませんか?」
と言われたわけです。
区の計画は無し
辛い辛い辛い。病児保育室って、補助もらってもキツいし、補助もらわなければ、経済的には絶対成り立たないんです。
僕「いやー、じゃあ江東区に一緒に行くだけ行ってみましょう。補助ももらえるかもしれませんしね」
ということで、区の保育課さんに行ってみたところ
「残念ながら、今のところ予定はないです。既に一つ病児保育施設はありますし」
という案の定の答え。ですよねー。
困っている人はたくさんいる
一方で、小暮先生のもとには「病児保育つくって!」の署名がたくさん届きます。
地域のニーズを調べてみたら、約3100人の保育園に通う子どもの数に対して、豊洲には4人の定員の病児保育が1つのみ。倍率にすると770倍。
しかもその病児保育室も
「インフルエンザは預かれない」
「感染症は預かれない」
という状況で、病児保育インフラは徹底的に不足しているという状況でした。
「訪問型病児保育だけでは、助けられていない人たちが、たくさんいる」
そう思った我々は、なんとかやれないか、知恵を絞ることになりました。
ニーズを明らかにし、区の事業に
とりあえず認可外で始めてみて、どれだけ多くの方々が困っているか、見える化しよう。
そしてその結果を見てもらって、江東区の意思決定者の方々に、「こんなに必要だったんだ。よし、じゃあ作ろう」と思ってもらおう。
そう思えば、赤字必至の認可外病児保育も、期限付きのものだし、なんとか耐えきれるのでは無かろうか。
そんな話をし、「小暮先生、僕らは人件費を持つので、先生は初期費用と家賃をご負担いただき、赤字を分かち合いましょう」と切り出しました。
「ちょこっとやりたいな」くらいだったら、ここで「いや、それは無理・・・」となるだろう、と思いました。
しかし小暮先生は、しばし目を瞑ったあと、
「良いでしょう、やりましょう」
と仰ったのでした。この人、本気(マジ)だ・・・。
あり得ない好立地に物件が
しかし、物件はありません。そりゃそうです。豊洲です。東京1、2を争う大人気スポットです。だから保育園が作れず、待機児童がいっぱいいるわけです。
僕が小学生の時は、工場と空き地だらけで閑散としてたのに・・・っ!!今は猫の額ほどの空き地もない・・・っ!
しかしそこに、奇跡のような住民ママからのお申し出が。
「私の住んでるマンションの1階の管理人さんの詰所が空いてるっぽくて。ちょっと管理組合に聞いてみるねー」
そのマンションこそ、豊洲駅徒歩1分の「豊洲シエルタワー」でした。
豊洲を象徴するタワマンに空きスペース!?
しかし、保育施設は迷惑施設扱いされることも多々ある中、地域住民の方々がOKされることなんてほとんどあり得ない。
「地価が下がる!」なんて言われるに決まってる。
「とりあえず、ダメ元で聞いてみてください」
と伝えて返事を待ったら、なんと
「管理組合の皆さん、快くOK出してくれました。みんな、子どもは宝だって」
目からブワッとしょっぱい液体が出ました。
なんと素敵な人たちなんだ、豊洲住民!さすがは故郷、江東区民。風景は変わっても、下町スピリットはここに生きている!!
そして開園へ
というわけで、この無謀な実験は、1月下旬にスタートいたします。
僕たちの組織体力が持たなくなったら辞めざるを得ませんので、その辺りはご了承ください。
是非とも、行政に分かって頂けるよう、住民の皆さんも一緒に声をあげていって頂けると嬉しいです。
「子どもが病気でも、社会がいつでも抱きしめる社会」に。
フローレンスの闘いは続きます。
編集部より:この記事は、認定NPO法人フローレンス代表理事、駒崎弘樹氏のブログ 2018年11月17日の投稿を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は駒崎弘樹BLOGをご覧ください。