昨年くらいから、人工知能(AI)が話題になることが増えた。AIの発展で、人間がやる必要のない作業については代替が進むことが予想されている。しかし、人間の関わりの本質的な部分がなくなることは考えにくい。
そのひとつが人脈である。今回は、『平凡な元会社員が3年で7億円稼いだ超速☆人脈術』(二見書房)を紹介したい。著者は、Webマーケッターの室井良輝さん。
人脈作りには時間がかかることを理解する
当然のことではあるが、人脈はある程度の時間をかけないと形成することは難しい。しかし、人脈がほしい人は即効性を求めている。
「コミュニケーションは、常に相手に興味を持つことが先です。自分に興味を持ってほしいからといって自分を売り込むと引かれてしまいます。お店で店員さんに強引にすすめられて、欲しくもないものを買わされそうになった経験はありませんか?たとえば、洋服を買おうとお店に入ると、すかさず店員さんが横にやってきて、『どんなものをお探しですか』と聞いてくる。そんなことをされるとお店を出たくなりますよね。」(室井さん)
「また、聞いてくるだけならまだしも、いきなり『これを買ったほうがいいですよ』なんて言われたら、驚いてしまいますよね。初対面で積極的に自己PRをするのは、こうしたお客様に嫌がられる行為と同じことです。信頼関係が構築されるまでは、絶対に自分を売り込まないようにしましょう。」(同)
自分にないものを相手が持っていると欲しくなる人がいる。本来は、タダで情報をもらうことはフェアではないがわからない人が多い。次はそんな困った人たちの傾向を解説する。
なんでも欲しがるクレクレに要注意
数年前に異業種交流会がブームになった。人脈構築の手段として異業種交流会が一定の役割を果たしていることは理解できる。著名人が参加していると、名刺交換に列をなしていることがある。会食中でも会場を走りまわり名刺収集に勤しむ人がいる。しかし、本来の人脈は人に魅力が無ければ集まらない。
「自分に少し還元してくれてもいいだろうなどと絶対に思わないことです。これはただの『善意の搾取』になります。お互い常にフラットな関係になっていることが理想的です。おごってもらったら、ごって返します。情報を教えてもらったら、参考になるような情報を返す。ドンピシャな情報でなくても、相手は感謝してくれます。こうしてフラットな関係にしておくことが関係を長く続けるコツです。」(室井さん)
主催者の「ピンはね臭」や、参加者の「売り込み臭」が漂っていたら、もう最悪である。「交流会で客を増やすぜ」と鼻息が荒い人が多くなり、こうなると「仕事をもらいたいクレクレ」が必然と増えてくるため建設的な交流会にはなりにくい。
本書では、AI時代を生き抜く「人脈術」を紹介している。あなたは「善意の搾取」をしていないか?室井さんが実践してきた「誰とでも親しくなれるワザ」も興味深い。筆者11冊目の著書『即効!成果が上がる文章の技術』(明日香出版社)もあわせて紹介しておきたい。
尾藤克之
コラムニスト、明治大学サービス創新研究所研究員