19日の債券市場では10年債利回りが0.090%まで低下し、8月28日以来の0.1%割れとなった。10年債利回りの0.1%という水準は市場でもかなり意識されている。
7月の日銀の金融政策決定会合において、「金利は、経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうるものとし」との微修正を行い、指し値オペの水準レンジを拡げることを示した。この水準は黒田総裁の会見から、これまでの「倍」との表現がでており、つまりマイナス0.1%からプラス0.1%とのレンジが、マイナス0.2%からプラス0.2%ということになる。
この微修正の目的は債券の市場機能を少しでも回復するためとみられ、その見方からすれば長期金利が0.1%以内に抑え込まれるのではなく、0.2%までの変動を容認するということになる。つまりは0.1%を超えた動きを期待というか、想定してのものと見方もできる。このため、0.1%がひとつの抵抗線として意識されていた。
ただし、レンジ拡大の背景には少しでもファンダメンタルズや海外金利動向などにも影響を受けやすくさせる狙いもあるとみられ、今回の10年債利回りの0.1%割れは米債の動きなどにも影響を受けた素直な低下ともいえる。
原油先物価格の下落などから、世界的な景気減速懸念が出ており、それがアップルなどを主体に米株の下落トレンドを形成しつつある。米中の貿易摩擦や英国のEU離脱問題、イタリアの財政問題などのリスク要因も金利低下要因となりつつある。原油価格の下落そのものも物価の低下要因となり、金利にとっても低下要因となる。
18日の米長期金利の低下は、これらのリスク要因も念頭に置いた上で、今後の利上げ減速を示唆したFRBのクラリダ副議長の発言が材料視された格好となった。
これに加え、19日の引けあとに報じられた、財務省は2019年度の国債発行計画で満期20年以下の固定利付債について全て減額対象の候補とする方針との観測も19日の日本の国債の利回り低下に影響していたかもしれない。
ここにきての日本の国債利回りの低下により、日銀は今後、国債買入の調整を行ってくる余地が生まれる。超長期ゾーンの減額観測が出ているが、長期ゾーンのさらなる減額もありうるか。
ただし、世界的なリスク回避の動きにより、これまでのゴルディロックス(適温)相場といわれた相場が終焉することも想定される。そうなると米国の金利の上昇も頭討ちになる可能性がある。これはつまり日銀による現在の緩和策の本格的な修正がより難しくなるともいえる。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2018年11月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。