昨日発表された「和解・癒やし財団(いわゆる「慰安婦」財団)』の解散方針、先日の「旧朝鮮半島出身労働者」の請求に関する韓国最高裁判所判決など相次ぐ国際法や国際約束を踏みにじる愚挙により、「韓国は日本との二国間関係における“レッドライン”を越えた」、自民党本部で今朝開かれた外交合同部会で私は訴えました。
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まず、最高裁判所判決は今後、国交正常化の法的な基盤である『日韓基本条約』の修正要求や空文化につながる懼れを生みました。さらに彼らの主張を究極に延長すると、自由主義陣営の第二次世界大戦後の国際秩序を規定した『サンフランシスコ講和条約』の否定にも発展しかねない、悪夢のような事態の招来が考えられます。
次に、「慰安婦」に関する『日韓合意』に基づく財団の解散方針は言語道断です。これまで安倍総理大臣や日本政府が我慢に我慢を重ねてきた事実を改めて紹介します。『日韓合意』に先立ち、同じ年の5月12日、韓国国会は、日本の首相として初めて米国連邦議会上下両院合同会議で歴史的な演説を行った安倍総理大臣を「歴史や慰安婦問題に対する反省がない」と名指しで糾弾する決議案を全会一致で採択しました。協力関係にある隣国の友好国首脳を議会が非難するとは非礼の極みであり、一人の反対者もいないのも民主主義国家として異常な光景に思われました。
そのような非礼に遭ったにもかかわらず、安倍総理は、日本国内の「右」陣営からの反発を抑え、2015年12月28日の『日韓合意』を政治決断。当時、外交担当内閣総理大臣補佐官を務め首相官邸にいた私は、安倍総理から「米国のいろいろな立場の方々に日韓合意をよく説明するように」と指示を受け、翌’16年の新年早々1月5日(水)〜10日(日)ワシントンD.C.を訪れました。「互いを非難する言動を米国など第三国を巻き込んで展開することは自粛する」ことの重要性をオバマ政権(当時)ホワイトハウス・国務省・国防総省高官、超党派の上下両院連邦議会委員長、メディア、シンクタンク有識者らに精力的に会って訴えました。
いまになって考えると、当初から安倍総理大臣は、『日韓合意』が約束通り「最終的かつ不可逆的な」解決につながらない一抹の危惧を抱いていたからこそ、『合意』のいわば「保証人」である米国へ直後に私を派遣されたのかと推測します。
『「慰安婦」合意は米国にアジア太平洋における戦略的利益を提供する』‘16年1月9日付『ワシントン・ポスト』紙
懼れられていた通り、『日韓合意』履行の迷走は韓国側でさっそく始まりました。日本が「慰安婦」財団に10億円を拠出する前提であったはずのソウル日本大使館前「少女像」の撤去が遅々として進まなかったのです。それでも、また安倍総理大臣の政治決断により、韓国側に履行を促す意味を込めて、日本政府は’16年8月31日に10億円を韓国に拠出しました。そして「少女像」は、外国公館の安寧・威厳の維持を接受国(韓国)の特別な責務と定めた『外交関係に関するジュネーブ条約』第22条第2項に明らかに違反したまま、ソウル日本大使館前の路上に今日も「元気に」立っています。
その後も韓国による『慰安婦』合意の精神を壊す行為はつづきました。たとえば、’17年11月7日、ソウルで行われた米韓首脳晩餐会に元「慰安婦」を招待してトランプ大統領に抱きつかせた映像は広く世界に流れましたし、米国内で「慰安婦像」を立てる動きもジョージア州、サンフランシスコ市、ニューヨーク市などで一向に止む気配がありません。
これまで日本側が我慢に我慢に我慢を重ねてきたことは、以上の経過からよくお分かりいただいたことと思います。今回の「慰安婦」財団解散の方針は、トドメの一押し、レッドラインを越える愚挙なのです。
今朝の党部会で私は、政府に毅然とした対応を求めるだけでなく、私たち自民党国会議員の対韓姿勢や議員外交のあり方についても問題提起を行いました。これまでいくら韓国が信頼を毀損する行為をしても、韓国通の日本の国会議員は笑顔と握手で韓国側と接してきました。「日本政府は厳しい論評を出したが、日本の国会議員たちの友好的な態度に変わりはない」と、彼らが日本の意図を誤って解釈してきた懼れがあります。日本の断固たる決意を誤りなく韓国に知らしめるためには、これまでとは「異次元」の対処が、私たち国会議員にも求められていると、私は考えます。
自民党総裁外交特別補佐、衆議院議員・河井克行(広島3区)
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