国による税収奪に断固反対!②行政改革が第一歩編

こんにちは、東京都議会議員(町田市選出) おくざわ高広です。

前回に引き続き、国による税の偏在是正措置に対する考えを示していきたいと思います。

前回の「国による税収奪に断固反対!①現状を振り返る編」で、都の見解をまとめましたが、21日から自民党税制調査会が本格的にスタートし、報道によれば年額3,000億~5,000億円もの追加措置(これまでの年額4,000~5,000億円の偏在是正措置に、さらに上乗せされる措置)があるとのことです。改めて、断固反対との立場から、一方で、都議会議員として私に出来ることに焦点を絞って話を進めます。

政治は数”と言われます。国会議員の大半は地方の代表者であり、東京や大阪といった大都市の理屈だけでは、彼らの納得を得ることはできません東京が偏在是正に反対するのと同様に、地方の国会議員や知事は偏在是正に賛成せざるを得ないわけです。それぞれが、有権者の皆様に選ばれて国会議員や知事として活動していますので、本気で偏在是正を止めようとすれば、東京都は地方の有権者の皆様にご理解、ご納得いただけるよう努力をしなければならないのだと考えます。

しかし、東京都の主張を見ていると、国に対しての反対姿勢が色濃く、東京が更に発展して、その経済効果が地方へも波及するといった論理は、地方出身の立場から見ると、上から目線に感じます。

では、どうすれば地方の皆様にも「偏在是正措置はせずに、東京に集積させようじゃないか」と思っていただけるかと言えば、ポイントは①信頼と②実利(への期待)であると考えています。

まず、東京都は、お金持ちで、無駄遣いも多いと思われていることを自覚しなければなりません。都の主張には、将来の財政需要が増大することへの懸念が書かれていますが、地方自治体の中には、目の前の財政危機に直面しているところもあり、そうした自治体からもご理解を得る必要があります。

11月18日の読売新聞広告にサントリーホールディングスの新浪剛史社長の下記のようなコメントが寄せられています。

サントリー新浪剛史社長(同社サイトより:編集部)

「都は地方交付税の不交付団体ということもあり、政策効果を充分に検証せずに予算を使っていると国や他の自治体から見られており、実際に公共サービスのレベルに差異が生じている部分もある。一方で都の取組が先進事例として紹介されることはほとんどないように思う。」

まさに、おっしゃる通りで、東京都政はまだまだ見直す余地があり、費用対効果を疑うバラマキと思える事業が散見され、政策の成果指標を定めておらず、効果測定を行っていないような事業が数多く見られます。先般行われていました決算特別委員会の資料も、一つ一つの事業を検証できるような内容ではありませんでした。(来年度以降は、予算・決算、事業の目的、成果などをまとめた資料を作成するよう要望しました。)

なぜ、こうした事業が数多くみられるのかといえば、政治と業界団体の関係があまりにも近すぎることが原因の一つといえます。都民ファーストの会でも7月末から8月頭にかけて各種団体ヒアリングというものを行っておりますが、「去年○円だったので、今年はもう少し増やして○円を要望」といった、根拠も示さずに要望を行う団体もありました。私から、根拠資料を出してくださいと言ったら、白い目で見られたのを覚えています(苦笑)

各種団体の要望の中には、素晴らしい内容もある一方で、(政治家個人や政党の)票や金と(東京都)政策実現や予算がバーターになっているような関係を早く断ち切らねばなりません。政治家によるビルド&ビルド&ビルド…の票取り合戦をやめるために、徹底的な「見える化」とEBPM(証拠に基づく政策立案)の導入を進める必要があります。

たしかに、小池知事就任後、2020実行プランの実施にあたってPDCAサイクルを強く意識するようになりました。また、昨年はエビデンスに基づく事業評価が行われた結果、効果の低い事業の見直しや廃止が行われ、約870億円の財源が捻出されました。が、まだまだ道半ばであり、最も大事なのが「2020改革プラン」です。


2020改革プランとは、2016年9月に設置された都政改革本部によってまとめられた「しごと改革」、「見える化改革」、「仕組み改革」の3本柱から成る行政改革プランです

「都民ファースト」、「賢い支出(ワイズ・スペンディング)」、「情報公開」の三原則を掲げ、量的削減だけでなく、質の向上を追求し、自律的で機動的な改革を目指すものです。2020改革プランを実現することが、将来にわたって東京大改革を進めていく事につながるものと確信しています。

一方で、都政改革本部のメンバーは、当初の有識者を中心にした陣容から、庁内実務担当者を中心にした陣容へと変わりました。自律的な改革を目指すという点では理解できますが、庁内論理で片づけられることの無いよう、厳しくチェックしていかなければなりません。

12月の定例会に、災害対策に関する補正予算92億円が上程される予定です。区市町村庁舎の非常用電源整備補助や避難所となる学校体育館等の空調設備補助といった内容には賛同するものの、それだけ余裕があると思われてはいけません。地方の各都市においては、その予算がなく、充分な災害対策をできずにいるところもあるわけですから、東京はずいぶん余裕があるんだなと思われることに繋がりかねません。

ある国会議員の方からも、「このタイミングで補正予算をあげるのは、偏在是正に反対する立場から見ても、地方の理解を得にくくなる」とのご指摘をいただきました。92億円の補正予算には、その趣旨と緊急性に鑑みても賛成をするつもりですが、来年度予算において同程度の金額を削減するよう、事業廃止(スクラップ)の提案もしなければならないと考えているところです。

こうした行政改革を進め、決して無駄遣いはしていないということを地方の皆様にご理解いただくことは、信頼関係を構築するために大変重要なことでありますが、「削減したら削減したで、もっとお金を取られちゃうんじゃないの?」といったご意見も伺います。

ここで大事なのは、行政改革によって生じた予算がいかにして地方に還元されていくのかを示すことです。現時点でも年間5,000億円近い税の再分配が行われているとのことですが、各地におしなべてみますと、1道府県あたり100億円程度という計算になります。であれば、東京に5,000億円を集積させることで、各道府県に100億1円以上の還元(社会課題を解決)できることを示さなければなりません。

上述の新浪社長は続けます。

「財源の都から地方への再配分に反対するならば、都も都民の税金がどのように使われ、どのような効果が出ているのかを徹底的に「見える化」し、効果が得られている好事例を国や他の道府県にアピールすべきだ。都はリーダーだという認識を持ち、予算を有効活用して、社会保障など日本が共有する課題の解決を先取りしてほしい

課題解決のトップランナーとして、イノベーション創出の発信地として、全国の災害対策基地として、東京都が担う本来の役割を果たそうとする姿を見せることが、地方の皆様の共感を得ることに繋がり、偏在是正措置という対症療法ではない、本質的な地方分権の議論へと繋がるはずです。

次回は、東京都の事業を具体的に取り上げながら、「国による税収奪に断固反対!③東京都が果たすべき役割編」をお送りします。是非ご覧いただき、ご意見などお寄せ下さい。


編集部より:この記事は、東京都議会議員、奥澤高広氏(町田市選出、都民ファーストの会)のブログ2018年11月23日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はおくざわ高広 公式ブログ『「聴く」から始まる「東京大改革」』をご覧ください。