「われわれは5000年の歴史を誇る。あなたがたイスラエルは3500年の歴史を持っている。それに比べると米国は200年余りの歴史しかない」
中国のビジネスマンがイスラエルを訪問し、商談する時、必ずと言っていいほど上記のセリフを吐くという。自国を誇り、商売相手のイスラエルを称賛する一方、米国を軽蔑する時の常套セリフという。海外中国反体制派メディア「大紀元」(11月23日)が報じていた。
大紀元によると、中国はイスラエルにも進出し、その先端科学技術を修得しようと虎視眈々と狙っている。それを読んで「商売上手なユダヤ人が中国のビジネスマンの甘い言葉に騙されるわけがないだろう」と思ったが、中国の上海国際湾務がイスラル最大の港湾ハイファ湾の一部運営権を25年契約で締結したという。そして別の中国企業がイスラエル南部アシュドッドに新たな港の建設契約を計画しているという。
中国の習近平国家主席が推進する「一帯一路」(One Belt, One Road)構想に積極的に参加するギリシャ政府が2016年4月、同国最大の湾岸都市ピレウスのコンテナ権益を中国の国営海運会社コスコ(中国遠洋運輸公司)に売却したように、イスラエル側も中国側が提供する巨額な商談に屈服したのだろうか。世界の金融界に君臨するユダヤ人商魂が中国企業の不透明な商談攻勢にやられたのだろうか。
大紀元によると、世界の第2のシリコンバレーといわれるイスラエルに中国が接近し、イスラエル企業が保有している先端技術の企業機密を盗み取っているという。具体的には、医療用レーザー技術で知られるアルマレーザー社、医療技術ルメニス社、画像認識開発コルティカ社を含め、多くの技術企業の株式を取得している。中国側の対イスラエル投資総額は2016年は1615憶米ドルにもなるという。「中国のファーウェイ(華為)、レノボ(聯想)、シャオミ(小米)はイスラエルに研究開発センターを設置し、電子商取引大手アリババも大規模な投資を行っている」(大紀元)という。
米経済誌フォーブス(電子版)は3月1日、「イスラエルのスタートアップへの中国企業の出資額は年々、上昇を遂げている」と報告し「アリババはイスラエルのデータ分析企業『SQream Technologies』に2000万ドルを出資した。また、中国のヘルスケア企業は1000万ドルの投資ファンドを組成し、イスラエルの医療関連企業への出資を行おうとしている」という。中国企業がイスラエル市場で活発な動きを見せているわけだ。
米トランプ政権は中国の不公平な貿易取引、強制的な技術移転、知的財産盗用に対し対中経済制裁に乗り出して対抗中だ。そこで中国側は親米国のイスラエルに接近し、先端科学技術関連企業を買収し、その知的所有権を奪おうと画策しているわけだ。
中国側の札束攻勢にイスラエル側が安易に屈服するとは思えない。2000年の亡命の歴史を経ながらも生き延びてきたユダヤ人の商魂は「赤の商人」の中国実業家にも負けない知恵と体験を持っているはずだ。
もちろん、「商いの世界」では多くの資金を持っている側が基本的には有利だ。「赤の商人」の攻勢に対し、「ユダヤ商人」はどのように対応するだろうか、とても興味深い。
米国ばかりか、ドイツなど欧州でも中国企業の買収や知的所有権の乱用に対し厳しい監視の目が注がれ出した。ドイツ政府は欧州連合(EU)域外の企業がドイツ企業に投資する場合、これまでは出資比率が25%に達した場合、政府が介入できる規制を実施してきたが、その出資比率を15%を超える場合に政府が介入できるように、規制を更に強化する方向で乗り出している。ズバリ、中国企業のドイツ企業買収を阻止する対策だ。イスラエル企業でも次第に中国マネーに警戒心が生まれてきている。いずれにしても、中国のイスラエル接近には目を離せられない。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2018年11月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。