カルロス・ゴーン氏の弁護人には元検察官の方が就任したようだが、同時にニューヨークにある大手ローファームの会長らがゴーン氏の弁護団を構成するというニュースが入ってきた。
アメリカの司法文化と日本の司法文化の違いが今後の弁護団の弁護方針に微妙に影響しそうである。
さて、どうなるだろうか。
日本にも司法取引制度らしきものが導入されているが、アメリカは司法取引の本場である。
SUITSという番組をインターネットで見たが、アメリカの司法の大要はこの番組で読み取れるのではないか。
報道されている事実関係から判断すると、ゴーン氏や日産が関係する事件は相当に奥が深そうだ。
とても一筋縄では行きそうにない。
正式に起訴に持ち込むのはごくちっぽけなものになるだろうが、検察当局や税務当局は、その気になればどこまでも捜査や調査の網を広げることが出来そうである。
ゴーン氏について逮捕状が執行され、勾留が認められている、という時点で事件の大筋は既に固められていると言っていい。
少なくとも、違法逮捕、違法勾留で検察当局が賠償請求される虞は少ない。日産側が捜査協力しているというのだから、検察当局も税務当局も大抵の捜査に必要な書類は入手できるはずである。
金融証券取引法上の開示義務がある事項に当たるか当たらないか、という法解釈上の争いには十分なり得るが、事実関係そのものを争うのは相当難しそうである。
さて、こういう状況で弁護団はどう動くのかしら。
捜査が終結するのを待って、やおら裁判で無罪判決や執行猶予付き判決を獲得するのを主たる仕事とするのが、日本の普通の刑事弁護士。
しかし、こういう状況での検察官出身の弁護人の役割は、捜査の範囲をどこまで狭められるか、ということにあるのだろうと思っている。
検察当局から一目置かれるような弁護士が弁護人に就く場合と、いつどこでどういう仕掛けをするか分からないようなトリッキーな弁護士が弁護人に就くのでは、自ずから検察当局の応対が変わってくるはずだ。
ゴーン氏についた日本の弁護士は、検察の中でも王道を歩いてきたと認められている人のようだから、認めるべきものは認め、争うべきものは争う、というオーソドックスな弁護方針を取るのではないかしら。
しかし、それでゴーン氏本人が納得なり満足するかどうかは分からない。
今回の事件は奥が深そうだから、どこかの時点でアメリカ的な司法取引がなされるのではないかな、という予感がしている。
アメリカのローファームが乗り出している、というのは、そういうことではないかしら。
まあ、事件の本筋とは何の関係もないが…。
編集部より:この記事は、弁護士・元衆議院議員、早川忠孝氏のブログ 2018年11月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は早川氏の公式ブログ「早川忠孝の一念発起・日々新たに」をご覧ください。