検察当局としては勾留延長請求が最もオーソドックスな選択だろうと思っていたが、欧米のマスコミならず、日本の国内でも日本の現在の司法制度の在り方について懐疑的な意見が出始めていたので、検察当局も若干慎重になるのかな、などと思っていたが、いやいやとんでもない、検察当局はますます意気軒昂のようである。
ゴーン氏、ケリー氏の両名について勾留延長請求をするだけでなく、昨日は記者会見まで開いてゴーン氏及びケリー氏の逮捕手続きには何の瑕疵もないと積極的に説明するに至っている。
郷原氏や八幡氏が火を点けたのかも知れないが、検察当局が本件について本腰を入れていることが分かる。
多分、検察当局にはとっておきの隠し玉があるのだろうが、ここまで本気になった検察当局を腰砕けに追い込むのは至難の技である。
裁判所が10日間の勾留延長を認めたというのだから、ひとまず郷原氏等の逮捕不当論は裁判所から一蹴されたということだろう。
本人が無罪を主張しているような事案の場合、通常の刑事弁護人なら勾留理由開示請求手続きなどを行って検察当局の捜査を一定程度牽制することなどを考えるものだが、ゴーン氏の弁護人もケリー氏の弁護人も今のところそういう手続きは取っていないようだ。
多分、様々な事情を考慮してそこまでの手続きは取らないことにしたのだろうと推測している。
私の見立てでも、本件についてはそこまでのことはしない方が結果的にはいいのではないか、と思っている。
まあ、このあたりのことは担当する弁護士の見立てによって大きく変わることがあるのでどちらがいいとは言えないのだが、最終的にアメリカ的な司法取引を考えるならあえて検察当局を不必要に困惑させたり、刺激したりはしないものである。
勾留延長をしたからと言って、必ず起訴されることが決まったわけではない。
検察当局にはいくつものシナリオがあるはずである。
今後の展開に注目しておいた方がいいだろう。
ゴーン氏もケリー氏も事件の長期化は望まないはず
司法取引の本場であるアメリカのロー・ファームの会長外がゴーン氏の事実上の弁護団に入った、ということは、事件が長期化すればするほどゴーン氏が負担すべき弁護費用の支払いが増えるということだろう。
さて、ゴーン氏がどこまでの費用の支払いに堪えられるだろうかな、ということを考えると、日本の採算度外視の人権弁護士が弁護人につくケースとは自ずから違った展開になるはずである。
日産等が弁護士費用を全部負担してくれるのならともかく、個人ですべての費用を負担するのはまず無理である。
刑事事件の方は、案外早く決着してしまうかも知れない。
もっとも、日産や日産の取締役の方々については、いずれ株主等から損害賠償請求事件が提起されそうである。
そういう事態になったら、こちらの方は結構時間が掛かる。
関係される皆さんは、今の内からそれぞれに覚悟されておいた方がよさそうである。
念のため。
編集部より:この記事は、弁護士・元衆議院議員、早川忠孝氏のブログ 2018年11月30日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は早川氏の公式ブログ「早川忠孝の一念発起・日々新たに」をご覧ください。