約1年ぶりに開催された米中首脳会談は、貿易戦争の休戦合意という果実をもたらしました。中国輸入品2,000億ドル相当への関税率を2019年1月1日から10%から25%ヘ引き上げることを回避し、米中は90日間にわたって妥協点を探る見通しです。
米中首脳会談で合意したポイントは、ホワイトハウスの声明によると以下の通り。
1)中国輸入品2,000億ドル相当への関税引き上げ(10%→25%)は、90日間猶予
2)90日以内に合意できなければ、関税率を引き上げへ
3)中国は貿易赤字削減を狙い、米国から農業、エネルギー、産業、その他製品を大量購入へ、農業品は直ちに実施
4)強制技術移転、知的財産、非関税障壁、サイバー攻撃、サービス、農業製品をめぐり直ちに協議開始
5)中国はフェンタニル(オピオイドの一種)を規制薬物に認定、これにより統制薬物法に基づきフェンタニルを米国人に売った者は中国国内で厳罰が科される
ちなみに4)については、合意事項として真っ先に掲げられていました。トランプ大統領が米国内で深刻化するオピオイド問題への対応をアピールしたかったというより、オピオイド問題こそ米中首脳間で最も歩み寄りが容易な議題だった可能性を示唆しています。北朝鮮問題に関する協議でも進展があったと明記されていましたが、オピオイド問題と貿易関連に関わる合意事項の後に挟まれていました。
声明によれば、中国製造2025に関わる項目や産業補助金撤廃などは、声明の範囲内では盛り込まれていません。しかしトランプ大統領は「両国に無限の可能性を与える、素晴らしく生産的な会談だった」と手放しで評価しています。習近平主席も、中国独禁当局が承認しなかったクアルコムによるNXPについて前向きに対応する意思を表明し買収案の再提示を求めたといいますから、一定の成果を認めたも同然でしょう。
G20首脳会合の記念写真、トランプ大統領の真横は安倍首相でした。前列マクリ大統領を境に右左と、何となく顔ぶれにチームカラーが表れている気がするのは、筆者だけでしょうか・・?
(出所:G20 Argentina/Flickr)
トランプ大統領のG20を振り返るツイッター、11月30日に投稿されたため、習主席とのツーショットは見られず。
(出所:Twitter)
さて、両者が貿易戦争の休戦合意に至った協議は晩餐形式でしたよね?気になるメニューは、以下の通り。
前菜:季節の野菜サラダをバジルマヨネーズ・ドレッシングとパルメザンで和えて、アルゼンチン産シャルドネとともに
主菜:サーロインのグリルに赤タマネギ、ゴートリコッタチーズ、デーツを添えて、2014年物のマルベックとともに
デザート:キャラメルを絡めたパンケーキをクリスピー・チョコレート、フレッシュクリームとともに
米朝首脳会談でのメニューと比較すると、寂しさは否めません。さすがに、協議晩餐とあって品数は少なめに、密度濃くといったところなのでしょうか?ただし、トランプ大統領の大好物であるウェルダンのステーキとミートローフの代わりに、サーロインのグリルが提供されたことは想像に難くありません。
(カバー写真:The White House/Flickr、2017年11月にトランプ大統領が訪中した当時の写真)
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2018年12月2日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。