1日にブエノスアイレスで開かれた米国のトランプ大統領と中国の習近平国家主席による首脳会談では、米国が来年1月に予定していた対中制裁関税の強化を猶予することを決定した。
米中貿易摩擦の発端はトランプ政権の発端にあるものの、いずれこれほど極端なかたちではなくても、米中の貿易摩擦が起こるのは必然ともいえた。それだけ中国の存在力が高まっていたともいえる。
トランプ大統領はこの決定に対して、「米中首脳による素晴らしいディール(取引)になった。」と自画自賛したようだが、今回の決定はあくまで一時的な猶予期間を設けたに過ぎない。それでも会談にこぎ着けたこと自体は多少なり評価しなければならないかもしれない。
米中貿易戦争は一時的な休戦条約を締結した格好だが、貿易戦争を仕掛けたトランプ政権内で、主戦派と和平派が存在していることで、終戦に至る見込みはたっていない。
今回のディールのお膳立てをしたのが、和平派というか国際協調派のムニューシン財務長官やクドロー国家経済会議(NEC)委員長などとされる。米中貿易摩擦を睨んだ株価の動きなども当然意識したものとなっていよう。
これに対して首脳会談にも臨席したライトハイザー通商代表部(USTR)代表やナバロ大統領補佐官らは主戦派、つまり対中強硬派は中国に対する批判を弱めていない。
米国は、中国が米国の先端技術を不当に奪って次世代産業を育成し米国の覇権を脅かそうとしている、との危機感を抱いているとされている(3日付毎日新聞)。
90日の停戦の間に知的財産権の保護など5分野で協議を続けるそうだが、90日で協議がまとまるとも思えない。90日以内に合意できなければ、米国は制裁関税強化に踏み切るとされている。
トランプ大統領のディールはあくまで一時的な時間稼ぎに過ぎない。それでも市場はこれをいったん好感した。しかし、問題を先送りされたに過ぎないことで、これをきっかけに相場のマインドが大きく変わることは期待しにくいのではなかろうか。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2018年12月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。