12月1日の米国のトランプ大統領と中国の習近平国家主席による首脳会談を受けて、米中貿易戦争は一時的な休戦条約を締結した格好だが、貿易戦争を仕掛けたトランプ政権内で、主戦派と和平派が存在していることで、終戦に至る見込みはたっていない。米国は、中国が米国の先端技術を不当に奪って次世代産業を育成し米国の覇権を脅かそうとしている、との危機感を抱いているとされている。交渉にあたって主戦派が前面に出てきているようである。
そこにあらたな火種が発生した。中国の華為技術(ファーウェイ)の孟晩舟・副会長兼最高財務責任者(CFO)が米中首脳が休戦条約を締結した1日にバンクーバーで逮捕されていたのである。イランとの金融取引を禁じた米国の制裁を回避するための仕組みづくりに関った疑いがあるという(ロイター)。
ファーウェイは中国最大の民営企業で、習近平指導部が進めるハイテク産業育成策「中国製造2025」で重要な役割を占める。ただし、日本でも各府省庁や自衛隊などが使用する情報通信機器から、安全保障上の懸念が指摘されるファーウェイとZTEの製品を事実上、排除する方針を固めたと伝えられたが(読売新聞)、米国はファーウェイなどの製品などについて注意喚起を行っている。ファーウェイを巡って、さらに米中の対立が深まる懸念がある。
ここにきての株式市場の動向などをみても、米中貿易摩擦の激化などを受けての景気減速の懸念がかなり意識されはじめているといえる。日経平均やダウ平均は不安定な動きとなっているが、チャートからはレンジ相場を下抜ける可能性もありうる。
債券市場をみると、日本の債券市場は先物の中心限月を見越しての踏み上げ的な動きとも取れるものの、米債の動きにも連動している。米10年債利回りは節目とみられた3%をあっさり下回り低下傾向となり、米国の長短金利スプレッドは縮小した。
これには米中の問題などからのリスク回避による動きもあるが、原油価格の下落も影響していた。原油先物のチャートをみるとWTI先物の50ドル近辺でひとまず大きな下落相場は小休止となった。しかし、こちらもまだ予断を許さない。ロシアが減産に難色を示し、協調減産の行方に不透明感が強まるなどしている。
OPEC総会などの動向も気になるものの、英国のEU離脱問題についても懸念材料となる。11日の採決を控えてメイ首相は苦境に立たされている。予想通り、否決されたとして、議会での動き次第では、再度、国民投票の実施の可能性も出ている。いずれにしても英国も不安定要素ではある。
米中貿易摩擦も加わって、世界的な景気減速の懸念が強まり、それが日米欧の株価下落の要因となりつつある。米国経済を牽引してきたハイテク株にもアップルなどを主体に陰りも見えてきている。今回の株価の調整は一時的なものではない可能性も意識しておく必要があるように思われる。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2018年12月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。