この度、鹿児島のダイナムさんが地域の高齢者に娯楽を提供しようとパチンコ店が無料の体験会を開くという企画を開催しました。そしてそれを地域共生、社会貢献とし、KKB鹿児島放送さんが放映したんです。
パチンコホールを経営する「ダイナム」、社会貢献の一貫としてパチンコ店に高齢者を無料招待
さらに兵庫県遊技業組合連合会青年部会が、今度は、知的障害等を抱える障害者の方をパチンコに招待したそうです。
パチンコ産業側の皆さんと警察庁にハッキリ申し上げますけど、これは絶対にやってはダメなことです。
パチンコ産業側は、度々不思議に思っていますが、従業員向けに依存症教育をやっている「安心パチンコパチスロアドバイザー」を導入!と誇らしげにおっしゃってますけど、一体何を学ばれているのでしょうか?
高齢者だって、知的障害を抱えた方だって、普通にパチンコ依存症は発症してますよ。
ご存じのはずですよね?なぜわざわざ、社会的弱者を依存症リスクにさらすのでしょうか。
特に鹿児島のニュース番組拝見しましたけど、高齢者といっても、まだまだお元気な方で、しゃきしゃきと歩いておられ、「すごく面白かった!」と興奮したように話されており、ハマってしまわないか?大丈夫だろうか?と大きな懸念を抱きました。
高齢者と、知的障害を抱えた方の相談は、本当に悲惨です。
先日も、50代の息子さんが、80代のお父様の相談に来られましたが、認知症が始まっているにも関わらず、止まらないとのことでした。
我が家の祖父もそうだったから分かりますが、いわゆる「まだらぼけ認知症」と呼ばれる状況で、デイサービスを利用し、入浴介助を受けるような状況でもありながら、それでも毎日パチンコに行っていたのです。足が弱りロクに歩けないのに自転車に乗り、なんとしてもパチンコに行くです。祖父は99歳で亡くなる2週間前までパチンコをしました。
また、先日も知的障害を抱えたご本人から相談を受けましたが、障害者年金を使ってしまい、借金生活になったとのこと。
さらにパチンコで出会った人にお金をだまし取られてしまったり、借金について相談した人に宗教に勧誘され、そこでまたお金をとられてしまったり、こういう方々は、二重三重にも苦難が押し寄せるのだなと暗澹たる気持ちになりました。
この高齢者と、知的障害を抱えた方々は、我々が相談を受けて最も苦慮する方々ですし、正直解決策がありません。
病院に措置入院して貰うわけにもいかないですし、治療プログラムを提供することができない方々です。
受け皿が全くありません。
ましてそれを「社会貢献」と呼ぶなどあまりに図々しいにもほどがあります。
KKB鹿児島放送さんと産経新聞さんにも、このような取り上げ方はやめて頂きたいです。
そして警察庁さんは、最近我々の訴えてきたことを、対策に盛り込んで下さっており、有難く思っておりますが、この件に関しても、どうか注意喚起を進めて下さい。
高齢者や障害者など、依存症の受け皿もない社会的弱者の方々を、パチンコに誘い込むべきではないと、ハッキリ見解を業界団体に伝え指導して頂きたいです。
自己責任論ではすまされない方々を、パチンコに誘い込み、万が一ギャンブル依存症を発症しても知らんぷり。ツケをご家族と我々現場に押し付け、我々は右往左往、自腹で日本中を飛び回る羽目に。挙げ句の果てには、そういう現場を敵視し、絶対に話しあおうともしない。
もし我々と話し合いができる姿勢にあれば、「こういうキャンペーンはやめて欲しい」と伝えることもできたはずです。
パチンコ業界がやるべき社会貢献は、なんと言ってもギャンブル依存症対策を進めることです。まずは年齢制限、本人排除、家族排除、それらをきちんとシステム化すべきです。
これらを指導できるのは、警察庁さんだけです。
ギャンブル依存症の8割を占める、パチンコ依存症。
まず最初に救わなくてはならないのは、高齢者と障害者そして若者と幼い子の母親です。
ましてや業界がわざわざその方々をはめるような取組みは、絶対に許さない!という強い姿勢で望んで欲しいと切に願っております。
編集部より:この記事は、公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表、田中紀子氏のブログ「in a family way」の2018年12月12日の記事を転載しました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「in a family way」をご覧ください。