量的緩和を終了?エ、エ、エ??
欧州中央銀行(ECB)が健康体に戻ったかの印象を与えるタイトルだが、そうではない。この決定をしてもECBは、量的緩和状態の真最中で、いまだ昔のような健康体に戻ったわけではない。この決定は「これ以上の肥満にはならない(=バランスシートを拡大しない)」と決意したに過ぎない。
量的緩和終了とは量的緩和開始前の状態、すんわち、標準体重に戻ったときにこそいえるはずだ。今回のECB の場合「異次元緩和加速の終了」が正しい表現だろう。
体重68kgの私が毎月、体重を5 kgずつ増やして行き、体重120 kgの肥満になってしまった。これはいけないと、とりあえずは毎月の体重を3kgずつの増加に押さえたとする。しかしこれはダイエットではない。まだまだ健康への意識が薄い。そのままついに150 kgに達し、これで本当にまずいと思い、体重を減らさねばと決意する。これでやっとダイエットを決意したといえるのだ。今回のECBの決定はこの状態である。
ダイエットとは150 kgをピークに体重が減少し始めることをいう。米国連邦準備理事会(FRB)はこの過程にある。そして元の体重の68 kgの体重に戻って初めて健康体に戻った、ダイエットが成功したといえるのだ。これが量的緩和の終了である。
金融政策も同じだ。量的緩和前のバランスシート規模に戻って初めて「量的緩和の終了」であり、FRB やECB は「量的緩和の終了」からはほど遠い。
さらに大問題なのは日銀だ。FRBやECB は少なくともダイエットを決意したり、ダイエットを始めた状態だ。しかし日銀はダイエットを決意さえしていない。未来永劫に肥満を継続する気配だ。
しかもFRB やECBは、私のような一般人の肥満からのダイエットなのだが、日銀はすでに小錦関、碧山並みの体格なのだ。それなのにダイエットをしようという頭さえない。
船に海水が浸水したとき沈没するか否かは船の大きさによる。同じ浸水量でも漁船は沈没してもタンカーはびくともしない。沈没の可能性は浸水量と船のトン数の関係で決まる。それと同様、財政の危機度や中央銀行のメタボぶりも対GDPで計る。日本の財政は世界最悪、日銀は世界最大のメタボ、不健康常態なのだ。
12月6日の参議院財政金融委員会で聞いたところ、11月時点でFRBのバランスシートは対GDP(国内総生産)比で20%、ECBは40%、英国中央銀行(BOE)は29%(2月末)なのに対し、日銀はなんと101%なのだ。日本の経済規模並みにお金をばら撒いたということ。お金ジャブジャブだ。ECB、RFB、BOE と比べてとんでもなくメタボだということ。それなのにまだ肥満(=お金をばら撒こうとしている)を継続するつもりだ。
11月26日の予算委員会で私が「出口はどうするのか?」と聞いたとき、黒田総裁は「海外の中央銀行の先行事例を参考にしながら考える」と答弁された。
しかし黒田総裁や私がダイエットに成功しても、その手法は小錦さんや碧山には通用しない。小錦さんは手術をするなどの過激なダイエットをしたと理解している。それほどのメタボでもなかったFRB がダイエットを始めたとたんに長期金利が上昇し、米株価が大幅下落した。ダイエットには大変苦労している。
FRB とは次元の違うほどに肥満してしまった日銀にダイエットの方法はあるのか?ダイエットを開始したら市場にどれだけの激震が走るのか?日銀は怖くてダイエットを開始できないだろう。
しかし人間同様、いつまでも太り続ければ死を迎えてしまう。昨今、「異次元緩和の副作用」がしばしば話題になる。最大の副作用は「出口が無いこと」なのだ。恐ろしい。
編集部より:この記事は、経済評論家、参議院議員の藤巻健史氏(比例、日本維新の会)のFacebook 2018年12月14日の記事を転載させていただきました。転載を快諾された藤巻氏に心より御礼申し上げます。