海外投資家が日本国債を大量に購入、その背景とは

財務省が13日に発表した12月2日~12月8日の対外及び対内証券売買契約等の状況(指定報告機関ベース)によると、対内中長期債投資は1兆7175億円の買い越しとなった。買い越しは3週連続となり、2005年1月までさかのぼる財務省のデータによると、これは過去最高となるそうである(ロイターとブルムバーグの記事参照)。

財務省庁舎(Wikipedia:編集部)

財務省の対外及び対内証券売買契約等の状況(週次・指定報告機関ベース)をあらためて確認すると、12月2日~12月8日は短期債も1兆9616億円買い越しており、短期債も加えると3兆6791億円もの買い越しとなっていた。

日本の債券市場は10月下旬あたりから上昇基調となっているが、この背景にはこのような海外投資家による根強い買いとともに、米国債の上昇があった。さらに債券先物はナイトセッションの出来高も多くなっていることから、海外投資家は債券先物にも仕掛け的な買いを入れていたように思われる。

海外投資家が中短期債を主体に日本国債を購入しているのは、ドル円ベーシススワップの上乗せ金利が拡大していたことが背景にあった。ドルを円に替えて投資すると上乗せ金利が発生し、多少のマイナス金利でも利ざやが稼げるという仕組みとなっている。

これに対して日本国内の投資家にとっては、すでに10年近い金利がマイナスとなっていることで、10年未満の国債で満期資金運用するとマイナスの収益となってしまう。このため、日銀担保などの用途以外ではマイナス金利となっている中短期債には投資しづらい環境にある。

かろうじてプラスの金利となっている10年を超える国債の利回りでも、ここにきての急速な利回り低下で、さらに運用しづらい環境となっている。しかし、海外投資家は上乗せ金利が発生する限りは、積極的な日本国債の購入が可能となっている。

念のため、これは政治的な何かしらの意図を持った買いではないとみられる。日本国債を政治目的で大量に保有してもあまり意味をなさないように思われる。

そもそも最も日本国債を保有しているのは日本銀行であることで、海外投資家による買い占めといったことは起こりえない。それでも日本国債の保有者はかなり偏りつつあることも確かである。

日本銀行による国債の大量買入が永遠に続くことは考えづらい。実際に日銀は14日に残存5年超10年以下の国債買入額を減額するなど買入額を減少させつつある。来年度の国債発行額は20年以下が減額される見込みともなっているため、日銀はさらに減額させてくるとみられるものの、それでもその存在感は大きい。

日銀の日本国債の大量買入と状況次第では売り方に回りかねない海外投資家の日本国債の保有額の増額は、今後の出口政策をさらに困難にさせかねない。


編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2018年12月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。