シャブ山シャブ子論争その後:「相棒」プロデューサーと面談

先月話題になり、国会でも取り上げられたシャブ山シャブ子論争ですが、

江藤あやさんのツイッターより:編集部

ドラマ「相棒」シャブ山シャブ子の弊害
「シャブ山シャブ子論争」で伝えたかったこと
ドラマ「相棒」番組プロデューサーからお電話が!
「シャブ山シャブ子騒動」思考停止のメディア

テレビ朝日の角南源五社長が、
「誤解を招きかねないという指摘をいただいたことを真摯に受け止め、今後の番組制作に生かしていきたいと思います。」

テレ朝幹部「相棒」の「シャブ山シャブ子」表現への抗議は「指摘いただいたことを真摯に受け止め、今後の番組制作に生かしたい」(スポーツ報知)

とコメントを出してくださったこともあり、一昨日、番組のプロデューサーさんらとお話しさせていただくことができました。

番組側からは3人でお越しくださり、そのうちのお一人はテレ朝さんの社内弁護士さんでいらしたので、地元の一般事件ですでに何度も薬物問題に関わられていらっしゃるとのことで、話をよく分かっていただくことができました。

我々「依存症の正しい報道を求めるネットワーク」からは、薬物依存症の問題の第一人者である松本俊彦先生、アスクの今成知美さん、ダルク女性ハウスの上岡陽江さんと私。それとネットワーク以外では、木津川ダルクの加藤武士さんが参加しました。

松本先生から専門家の意見として、「薬物依存症の人はダメ絶対運動が定着してしまって、『危ない』『トラブルを起こす人』という間違ったイメージになってしまい、恥ずかしながら精神科医の間でも「薬物の人は診ない」と医療のネグレクトが起きてしまっています。

また、こういったイメージで子供たちを薬物から守ることができているなら、100歩譲って、この作り方もありなのかもしれないと思いますが、残念ながら、こんな人たちが薬物をもって近づいてくるわけではないので、子供たちも守れていない、むしろ逆効果になっています。

そして間違ったイメージから、住民のダルク排斥運動なども起きてしまい、地域での矯正も阻んでしまっています。

今回、我々の主張は文句を言ったような形になってしまっていますが、逆にこれだけの人気番組であるメディアの力を使って、イメージアップにご協力いただけないかと思っています」とお話しいただきました。

また、28年間ダルク女性ハウスで、女性の薬物依存症者の支援を続けて来られた、ダルク女性ハウスの上岡陽江さんは、「今まで28年間支援をしてきて、あんな風になってしまう女性には、一度も出会ったことはありません。皆さんが描いたいわゆるシャブ山シャブ子と言われる女性たちにも子供がいます。私は、ずっと子育て支援をしてきたので、そういう薬物依存の親を持つ子供たちにも配慮をして頂きたいです」と、お話しされました。

世の中の皆さん、薬物依存の女性たちに子供がいるってこと、もしかしたら気が付いていないのではないかと思うんですね。でも、覚せい剤で刑務所に入っているお母さんの出所を待ち望んでいる子供たちなど、この世にいくらでもいるわけです。

その子たちの大切な母親が、狂気に満ちた殺人犯のように描かれたらどう思うでしょうか?
しかもそれが事実ならともかく、虚構の世界で傷つけるのはやめて欲しいと思います。

そして木津川ダルクの加藤武士さんは、約1300人ほどの署名を集めて来られ、「30年にわたり薬物依存の回復に貢献してきたダルクが、今、各地で排斥運動にあい、孤立しています。間違ったイメージをテレビが放映すると、多くの人たちはそれを真実と思ってしまいます。その辺、十分な配慮をして下さい。」とお話しされました。

このダルクの排斥問題、現在炎上中の南青山の児相反対運動にも通ずるものがありますが、よくわかっていない人たちが、勝手なイメージで「怖い」「危ない」「問題を起こす」と騒ぎたて、「必要なことはわかるけど、近くには来ないで!」という自己中心的な考えが、今や日本中を席巻しているんですよね。
いや、ダルクさんなくなったら、街は大変なことになりますから…

そしてアスクの今成さんからは、アルコールでもあったメディアとの問題に対し、これまでどう話し合い、メディア側がどう改善して下さったのか?具体的な事例をお示し頂きました。

例えば、今じゃ考えらないですけど、かつてはテレビ番組で、「ビールはミネラルが摂取できる!」と妊婦さんにすすめたり、出演者にがんがん「イッキ飲み」をやらせたりしていたのだそうです。

ひぇ~~~~~!イッキ飲みでこれだけ多くの若者が亡くなっているのに…
妊婦さん飲んじゃいけないって、今や常識なのに…
メディア側の無知による功罪って今も昔も大きいですね。

でも、そこから例えば、訂正のテロップを入れてもらったり、番組ホームページに正しい情報を掲載してもらったり、企画を修正したりと、どういう対処ができるか?ということを話し合い改善してきた歴史を、お伝え頂いたことで、テレ朝さんも「なるほど~」といった感じで、受け止めてくださっていました。

どんな問題もそうですけど、たたかれることを覚悟で、それでも是正してほしい偏見や差別に対し声を上げていくことで、少しずつ社会に理解が深まってきたわけですよね。そしてそれをやってきてくださった、今成さんたちのようなパイオニアがいたからこそ、私のような後輩らも続くことができています。
そしてその事例をメディアの皆様にも是非参考にしていただけたらと思います。

さて、私からは何をお伝えしたか?
「ドラマの中で、回復した依存症者がヒーローになるようなストーリーを作ってください!」と、お願い致しました。

だってそれこそマイノリティの味方、他とは違う視点視野に立つ、右京さんらしいじゃないですか!

テレ朝の皆さんに「ダメですか?」と伺ったところ、「この場で即答はできませんが、何ができるか検討させていただきます」とのこと。

またダルクの排斥運動などが起こっていることなど、全くご存じなかった模様で、こうして実際生で会っていただき、理解を深めていただいたことは、とびっきりの人気番組を制作されている、優秀な方々だけに、とても有意義だったと思っております。

私たちとしては今後メディアの方々と、こうした意見交換や勉強会が何とか実現しないかな?と願っています。

これからは、誤解や偏見を助長する番組ではなく、「回復」に目を向けた番組が増えてくることいいなと、心から願っています。


編集部より:この記事は、公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表、田中紀子氏のブログ「in a family way」の2018年12月21日の記事を転載しました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「in a family way」をご覧ください。