昨日の勾留延長請求が裁判所によって却下された、ということに驚いて検察幹部の一部の方が裁判所に対して怒っている、などという報道をした新聞があり、また、元検察官の方が如何にも軽々しく「検察が負けた」などとコメントしておられるのを知って、検察関係者の中では、内心、「勝った」「負けた」などという世俗的な感情に捉われる人が多かったのかな、と思わないでもないが、くれぐれも「勝った」「負けた」などとは言わないで欲しい。
弁護士の場合は「勝った」「負けた」という感情が働くのはある程度仕方がないのだが、公益の代表者、法的正義の執行者であるべき検察官がそういう極めて俗っぽい感情に支配されて法の執行に当たっている、などということになると、司法に対する信頼が大きく損なわれていくはずだから、あくまで淡々と法を執行している、正義を貫いていると言ってもらいたいものである。
検察当局の勾留延長請求が却下されたことは、法律実務家の目からすると特別に奇想天外のことではない。
私でもその立場にあったら勾留延長請求は却下したかも知れないな、と思う程度のことであって、検察当局がいくら憤慨しても詮方ないことである。
ここは、裁判所が無批判に検察庁に追従しなかった、ということで裁判所を評価すべきところであろう。
さて、次に検察当局はどういう手を打つか、弁護人はどう対処するか、ということに注目していたが、検察当局は特別背任でゴーン氏の逮捕に踏み切った。
マスコミが検察当局の批判に転じようとしているという空気を読み取っての検察当局の一手ということになるだろうが、マスコミの報道や郷原氏の批判が検察当局の次の一手を引き出した観がしないでもない。
これで、検察官の方々は大晦日も正月もない、ということになったはずである。
当初の予定では12月27日か28日頃に追起訴をして、年末年始の休みを取ってそれからゆっくり特別背任等の捜査に取り掛かるくらいのスケジュールでいたはずが、勾留延長請求却下で捜査を急ピッチで進めなければならないことになった。
関係証拠はすべ英文だろうから、証拠書類の翻訳には大変な手間が掛かるはずである。
勿論、参考人や被疑者の取調べ等は基本的にすべて通訳付きのはずだから、調書の作成にも難儀するはずである。
まあ、特捜部の方々は、応援検事を含めて、皆さん、正月休み返上ですね、と同情しないでもない。
マスコミの方々は、この特別背任での逮捕を、検察当局の反撃の狼煙だ、などとくれぐれも見做さないでいただきたい。
まあ、検察当局が予定していた捜査スケジュールが狂ったのは間違いないだろうが、報道されていた事柄だけから推察するに、特別背任での強制捜査は必然だったのだろう。
編集部より:この記事は、弁護士・元衆議院議員、早川忠孝氏のブログ 2018年12月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は早川氏の公式ブログ「早川忠孝の一念発起・日々新たに」をご覧ください。